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ロバート・カーソン シャドウ・ダイバー 早川書房 [日記(2005)]

シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち

シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち

  • 作者: ロバート・カーソン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/06/23
  • メディア: 単行本

 深海に沈む沈没船に潜るダイバーと彼らが発見した沈没船の謎を描いたノンフィクション。たとえば、深さ50~60mの沈没船に潜る危険をこのように書く。
「(沈没船の)船内で苦境におちいり、パニックを起こしたダイバーのその後の運命を見てみよう。心拍数と呼吸数がはねあがる。水深60メートルでは、肺を満たすには、海上と比べて7倍の体積の空気が必要なので、タンクの空気は急速に減り、みるみるうちにゲージの針はレッドゾーンへ向かって落ちてゆく。その光景を見ることによって、鼓動と呼吸はますます速くなり、つまりは問題解決の時間がさらに短縮される。空気を大量に吸えば、窒素酔いはパニックを悪化させる。こうして悪循環がはじまる。」さらに、潜水病から逃れるためには、20分の潜水には2時間の水中での減圧が必要とされる。
 彼らが水深70mで見つけたのは、ドイツの潜水艦Uボートだった。海軍の記録にもないUボートの謎を追ってダイバー達の探索が始まる。窒素酔いと潜水病の危険にさらされ、2年半の間に3人の犠牲者を出しながら、何故どのように彼らはUボート沈没の真相を突き止めたのかがこの物語の主題である。ベトナム戦争の優秀な衛生兵ジョン・チャタトン、海軍少将を祖父に持ち、優秀な成績にもかかわらず海軍に入れなかったリッチー・コーラーの二人を軸に後半はドイツ、ワシントン、ニュージャージーを舞台に水中と陸上の謎解きが進行する。4年間を費やし家族まで犠牲にして、何故これほどまでにUボートの艦名解明にこだわったのか。コーラーは自分にドイツ人の血が流れているためだと考え、チャタトンは海底に眠る彼らの家族に真実を伝えるためだと云うが、Uボートの謎の解明は、人生の何処かで見失った彼ら自信の自分探しの旅である。
 ふたりは陸上での調査によりUボートの艦名をほぼ解明するのだが、確かな証拠を求めて、どう分析しても死の答えしかない潜水を敢行するチャタトン、すべての答えが得られた後、乗組員の遺族、関係者をドイツに訪ねるコーラー。何がふたりを冒険家を越えた行動に走らせたのか。
 彼らの冒険を単なる冒険物語に終わらせない再読に耐えうるノンフィクション、500ページを一気に読ませる。
uboat.net
特型潜水艦伊401

★★★★☆


Google Earth [日記(2005)]


 京都御所から比叡山を望む

 Google Earthで遊んでみた。Google Mapもすごいが、こっちの方は驚嘆!これだけの情報が入手出来るとはいい時代になったものだ。
Google Earth →http://earth.google.com/


XmasTree [日記(2005)]


 
通勤途上のXmasTree。


2005年度 毎日出版文化賞 [日記(2005)]

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/03/26
  • メディア: 単行本


本年の毎日出版文化賞に村上龍の「半島を出よ」と佐藤優の「国家の罠」が選ばれた。毎日出版文化賞といえば、どちらかといえば人文科学系の堅い本が多いと思うが、この二つは正直びっくり。「国家の罠」は読んでいないが、著者はあの鈴木宗男問題で背任罪で外務省を追われた官僚であり、「半島を出よ」は確かに面白かったが、両者ともどちらかといえば時事的な主題であり、正直毎日出版文化賞のようなものを受賞するとは予想外である。
受賞理由は、
「国家の罠」については、『「国策捜査」の罠に落ちた政治的確信犯として自らを位置づけ、その正当性を主張する国家に対する告発の書・・・』
「半島を出よ」については、『村上氏は北朝鮮という「他者」の仮構によって日本という「システム」の機能的な弱点を徹底的に考え抜き、今日の時代状況を壮大な思考実験として提示している。』
であるらしい。
読書日記 →http://blog.so-net.ne.jp/e-tsurezure/archive/20050509


世界遺産 ヴァルベルイの無線電信局 [日記(2005)]


世界遺産 ヴァルベルイの無線電信局(スウェーデン) 10月23日放送
Radiostationen Grimeton SAQ
 
 この手のものが好きで毎週欠かさず観ている.世界遺産といえば自然か歴史的建造物が多いが、「無線電信局」類は初めてであろう。現代の感覚と全く異なる無線電信局の姿に圧倒される.200kw交流発電機,380mおきに建てられ高さ127mの6基のアンテナ。1923年完成の送信棟は「80年前に設置された無線局内部の機器類は全て、当時と同じ状態で保全されており、今でも世界に向けて長波の電波を送ることができる」らしい。「19世紀末から20世紀始めにかけて、スウェーデン国民の1/4が新大陸に渡ったため大西洋を越える無線が必要となった」ために建設された。
 日本にも同様な施設があるらしい。宇佐美送信所関連資料集
刈谷市の無線の鉄塔
 ヨーロッパとの無線通信を目的に設置され,アンテナは250m高,1760m長、出力500 kWという巨大な通信施設である.1950年よりアメリカ海軍に接収され、1994年に返還された.1993年まで17.842kHzの超長波で原潜との交信に使われていた.送信機は出力700kWの高周波発電機で,ヴァルベルイを上回る.残念ながら鉄塔は1995年に撤去されたらしい. 残っていれば間違いなく「世界遺産」だろう.


宮本 常一 忘れられた日本人 岩波文庫 [日記(2005)]

忘れられた日本人

忘れられた日本人

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1984/01
  • メディア: 文庫

 「旅する巨人」で宮本常一に対する偏見、イメージができあがったためか、素直に読めない。有名(らしい)な「土佐源氏」を読んでも「梶田富五郎翁」を読んでも、物語より語り部より宮本常一を常に意識してしまう。そこには丸い眼鏡をかけ、じっと耳を傾ける40代の男がいる。それはファーブルが南フランスの田舎の丘陵で地面には這いつくばるようにじっとタマコロガシを観察している姿である。「旅する巨人」よりも先に読むべきであった。
 網野善彦の解説を読むと、本書を文学作品として読んでもよい、とある。そういえば、昔読んだ柳田国男も文学全集の一冊だった。宮本常一版「街道をゆく」とかんがえれば、楽しめる。

佐野真一氏と渋沢敬三に敬意を表し、かつ紀行文として★★★★☆。


GooleMapとナスカ地上絵 [日記(2005)]

ナスカの地上絵 

旧聞に過ぎるが「グーグルの地図は鮮明過ぎ 各国が懸念表明」の記事を読んで,「北朝鮮の寧辺の核施設」が見られるならナスカの地上絵は見られるだろう,ピラミッドも可能かと試してみた.ピラミッドはカイロからナイル川をたどれば比較的容易に見つけることができる.GoogleMapでピラミッドを発見すること、ちょっとした感動である.ナスカの地上絵はさすが場所が分からない.Googleで検索をかけると先達のページが見つかった.考えることは誰も同じらしい.この調子で世界各国を飛び回る.北米は高速道路を走る車が分かるほど鮮明に出る.「テロリストが基地などの衛星写真をネットで入手する恐れがある」そのとおりだとは思うが,世界を股にかけるテロリストが衛星写真のDVDなど手に入れていないわけは無いし,世界で数億のインターネット利用者のサービス享受(楽しみ)を奪うことは無いだろう.これは,ポルノが堂々とnetで出回り,最初こそ論議を呼んだが何時の間にやら誰も気にしなくなったことと同じではないだろうか.テロリストに利用されるリスクより,教室にいながら世界を飛び回れる教育効果の方が大きいと思うが,どんなものだろう.小学生の頃GoogleMapに出会っていたなら,きっと地理好きになったと思うし,中学生時代に英辞郎と翻訳サイトががあったなら,英語の進歩も早かったと思う(今だから何でも云える).


千住 博, 野地 秩嘉 ニューヨーク美術案内 光文社新書 [日記(2005)]

ニューヨーク美術案内

ニューヨーク美術案内

  • 作者: 千住 博, 野地 秩嘉
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/10/14
  • メディア: 新書

 NYに出張した上司から勧められた一冊。画家・千住博とノンフィクションライター野路秩嘉が案内役をつとめるニューヨークの美術案内書.
案内されるのは,メトロポリタン美術館,ニューヨーク近代美術館,チェルシーのギャラリー,フリックコレクション.作家はフェルメール,ゴッホ,モネ,ルノワールからピカソ,アンディ・ウォールフォール,ジャコメッティなど多岐にわたる.ニューヨークの美術館案内というより,美術(アート)の案内(見方)書といういったほうがふさわしい.
 画家・千住博からは,画家ならではの楽しみ方が,野路秩嘉からは,ニューヨークのアートビジネスについて教えられる.読後「今度美術館に行ったら耳を見てみよう」と思うこと必定である.
 作品に50㎝まで近づいて作家の目線で鑑賞するという手法も機会があったら是非試してみたい.9月に京都美術館で「ルーヴル美術館展」を催していたので観にいったが,とても「50㎝まで近づ」けるような状態ではなかった.薄暗い中でスポットが当たった絵を人垣の後ろから「鑑賞」しただけであった.フェルメールをみにいった時は,確か立ち止まらないで下さいみたなこと云われたような気がする.10年ほど前に仕事の途中に抜け出してメトロポリタン美術館に行ったことがあるが,ガードマンも居ず絵の前のロープもなく,広くゆったりとした展示室でくつろいで鑑賞することができた.教科書に載っていたあの絵が手を触れる距離でみることができることに感激した.
 傑作なのは,デミアン・ハーストの作品である.1991年に制作された213㎝×640㎝×213㎝のその作品の組成は,なんと「ガラス,スチール,シリコン」ここまでは普通である.加えて「ホルマリン,サメ」である.なんと6メートルの水槽に入ったホルマリン漬けの「鮫」である.題ががしゃれている「The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living 」.この作品が800万ドルで売れた,買ったのは30代の金融マンでヘッジファンドの開発が仕事であるという,理由は・・・.
 もう一つNYのパフォーマンスアート熊のぬいぐるみ「ピム」の話も心暖まるエピソードである.
メトロポリタン美術館→http://www.metmuseum.org/
NY近代美術館 →http://www.moma.org/
フリック・コレクション→http://www.frick.org/

あまりに簡単に読め、投資効果が薄いので★★★☆☆


佐野真一 旅する巨人~宮本常一と渋沢敬三 [日記(2005)]

旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三

旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三

  • 作者: 佐野 真一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1996/11
  • メディア: 単行本


 渋沢という名字からわかるように、敬三は渋沢栄一の孫に当たる。戦争中に日銀総裁、戦後に大蔵大臣をつとめ、KDDI、文化放送の会長を歴任し、1963年67歳で死去している。財界人にして政治家。この渋沢敬三が著作まである民俗学者であり、宮本常一、金田一京助などのパトロンであった。「旅する巨人」は副題とおり、渋沢敬三と宮本常一を軸に昭和の民俗学の勃興を描いたノンフィクションである。
<銀行屋というものは、小学校の先生みたいなものです。いい仕事をしてだんだん成長した姿をみて、うれしく思うというのが、本当の銀行屋だと思いますね。えらくなるのは生徒です。先生じゃない>という言葉は敬三のスタンスを一言で言い表している。敬三は文字通り人間のバンカー、学問のバンカーとして宮本常一をはじめ多くの学者、研究者を世に出し、民俗学を育てた。敬三個人は見事に歴史の後ろに隠れてしまっている。これほどの仕事をした人物とは全く知らなかった。
 宮本常一については、日本全国を旅して廻った常民の記録者として知っていたが、まとまったかたちでその事跡を知ったのははじめてである。
「宮本はよく旅の巨人といわれる。しかし、その大きさは、歩いた距離にあるわけではなかった。宮本の本当の大きさは、歴史というタテ軸と、移動というヨコ軸を交差させながら、この日本列島に生きた人々を深い愛情を持って丸ごととらえようとした、その視点のダイナミズムとスケールにあった。」
 あとがきにあるが、雑誌掲載当時の本書の原題は「三代の過客」であったらしい。宮本常一、渋沢敬三それぞれの祖父、父三代にわたる歴史が今日の民俗学を準備したといえるのでないか。原題のほうが本書にふさわしいと思われる。
 宮本常一については書き足りないと思われる。本書の目玉は「渋沢敬三」かもしれない、宮本常一については著作を読めばよいということかもしれない。「メディアの支配者」「白州次郎」など課題図書は多いが、「阿片王」から「旅する巨人」に行ってしまった。当然次は「忘れられた日本人」となる。
文句なしに★★★★★


毎日新聞『今週の本棚』(7) [日記(2005)]

10月23日 毎日新聞 今週の本棚

戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ

戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ

  • 作者: 野中 郁次郎, 戸部 良一, 鎌田 伸一, 寺本 義也, 杉之尾 宜生, 村井 友秀
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2005/08/06
  • メディア: 単行本

五百旗頭 真 評
 副題が「戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ」。「逆転」が刺激的である。六つのケースが書いてあるらしい。
・毛沢東の国民政府に対する逆転
・チャーチルによる英本土上空の防衛戦
・スターリングラードの逆包囲作戦
・マッカーサーの仁川上陸
・サダトの第四次中東戦争
・部と泣くの対米勝利
 「・・・大局をつかみ逆転勝利への不屈の意志を持つリーダーの存在が決定的である。・・・自他の強みと弱みを鋭く認識し、強者である的が全面的に力を発揮しがたい場を設定し、自らの限られた強さをもって的の弱さを打ち破る戦略が、ほぼすべてのケースの急所であろう。」いずれにしろ、9回2死からの逆転である。
先に読まねばならないのは ↓

失敗の本質―日本軍の組織論的研究

失敗の本質―日本軍の組織論的研究

  • 作者: 戸部 良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生, 村井 友秀, 野中 郁次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1991/08
  • メディア: 文庫