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映画 マイウェイ 12,000キロの真実(2011韓) PrimeVideo [日記 (2022)]

マイウェイ 12,000キロの真実 [DVD]   舞台が大平洋戦争前の《朝鮮》だ云うので観ました。この時代を舞台にした韓国映画は『密偵』『暗殺』『お嬢さん』を観ましたが、セットや風俗はノスタルジックでなかなかのものです。朝鮮人を貶める日本人の登場は定番みたいなものですが。

 1928年京城(ソウル)で、日本人の長谷川辰雄少年、朝鮮人のキム・ジュンシク少年が出会います。朝鮮は1910年に日本に併合されていますから、ジュンシクは植民地の少年、辰雄は宗主国の少年。正確には、当時の朝鮮は植民地ではなく日本ですが、日本人と朝鮮人は支配、被支配の関係にあります。

 1940年の東京オリンピック(後に日本が辞退)のマラソン選考会で、このふたりがデットヒートを繰り広げ、ジュンシク(チャン・ドンゴン)が優勝します。ところが途中で走行妨害があったとして失格、2位の辰雄(オダギリジョー)が優勝します。抗議は暴動に発展し、ジュンシクたち朝鮮青年は警察に捕まった挙げ句、軍隊に放り込まれます。余談ですが朝鮮に徴兵制が敷かれるのは1944年で、それ以前は志願制。ジュンシクが兵士として戦場に立つためにはこれしかないわけです。『マイウェイ』は、マラソンが一方のテーマとなっています。たぶん、1936年ベルリンオリンピックのマラソンで金メダルを獲得した孫基禎(当時は日本人)が背景にあります。

 1939年ノモンハン、ジュンシクと辰雄が戦場で再び出会います。ノモンハン事件は満州国とモンゴルの国境紛争で、それぞれの国のバックに付く日本とソ連の戦争。わずか4ヶ月間で双方に2万を越える戦死者が出る激戦です。ジュンシクは一兵卒ですが辰雄は大佐、「皇軍」「天皇陛下」を連発する典型的な日本軍人。朝鮮兵を「チョーセンジン」と蔑視する下士官も登場し、演じるのは「れいわ新撰組」の山本太郎。
 激戦の末、ジュンシクと辰雄はソ連軍の捕虜となりシベリアの捕虜収容所に送られます。捕虜収容所は、「シベリア抑留」によって明らかになっていますが、60万人の捕虜の10%が亡くなるという過酷な生活です。生き延びるためにソ連軍に寝返る捕虜、は日本人の誇りを捨てず虐待を受ける辰雄など人様々。

 1941年の東部戦線、ナチスがソ連に侵攻し捕虜は赤軍の兵士として戦争に投入されます。独ソ戦の戦場はウクライナ辺りでしょうか。満足な兵器も与えられずドイツ兵と戦う赤軍兵士、退却を許さず味方の兵士を撃つ赤軍将校。この辺りはハリウッド映画のパクリ。辰雄は、この赤軍将校にノモンハンで退却する日本兵を射殺した自分を重ねるわけです。
 ジュンシクと辰雄は、ドイツ兵の服を奪い朝鮮を目指して戦場を離脱します。こうなるとジュンシクと辰雄には恩讐を越え友情が芽生えます。
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 1944年の仏ノルマンディー、ふたりは、ドイツ兵として連合軍のノルマンディー上陸作戦のあったユタ・ビーチへ送られます。映画とは云え荒唐無稽ですが、これにはヤン・キョンジョンというモデルがあります。ユタ・ビーチで、日本、ソ連、ドイツに徴兵された朝鮮人がアメリカ軍の捕虜となったそうです。韓国では有名な話で、TVでもドキュメント番組として放送されたようです。
 ジュンシクはユタ・ビーチで命を落とし、死の間際にマラソンで獲得したメダルを辰雄に渡します。日本人と分かれば命の保証がないため、朝鮮人として生き延びろということです。
 ラストは、”JS KIM”と記されたユニフォームを着て走る辰雄のマラソン姿で幕。

 ノモンハン、シベリア、ノルマンディーと数奇な運命をたどったヤン・キョンジョンと、ベルリンオリンピックの金メダリスト孫基禎を元に、ナショナリズムを謳った映画です。ジュンシクはユタ・ビーチで死んでいますからヤン・キョンジョンは日本人辰雄と云うことになり、親日映画になってしまいますw。
 どこまでが実写でどこからがCGなのか?ですが、戦闘シーンは迫力満点です。韓国でヒットしたのかどうかは分かりませんが、amazonのレヴューは概ね好意的で、個人的にもイチオシ。

監督:カン・ジェギュ
出演:オダギリジョー、チャン・ドンゴン

タグ:映画
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