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チキンラーメンで焼きそば [日記 (2022)]

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 チキンラーメンで焼きそばが出来ないかと思って検索をかけてみるとヒットしました。概ね
1)普通に茹でる
2)スープを捨てる
3)サラダオイルで炒める
4)トッピングは、紅生姜、青のり、目玉焼きE.T.C.とお好みで

というものです。で、やってみました。味は汁無しのチキンラーメンですw。味は茹でる水の量=捨てるスープの量によって決まります。缶ビール1本に丁度いいアテです。

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映画 ユナイテッド 93(2006米) [日記 (2022)]

ユナイテッド93 [DVD]  アメリカの9.11同時多発テロでハイジャックされた旅客機の映画です。
  同時多発テロは、ワールドトレードセンターにアメリカン航空11便ユナイテッド航空175便の2機が、ペンタゴンにアメリカン航空77便1機が突っ込みましたが、目標を達せられず墜落した4機目があったことは知りませんでした。その4機目がユナイテッド93便です。

 舞台は、各地のコントロールセンターとユナイテッド93便の機内だけ。出演はほぼ無名の俳優。アラブ人テロリストによるハイジャックと乗客の恐怖、4機のハイジャックを同時に抱えたコントロールセンターの混乱がドキュメント風に描かれます。狭い機内は多分手持ちカメラで撮影さられたものと思われ、臨場感があります。

 同時多発テロの経緯をwikiから拾う

08:14 11便がハイジャックされる
08:46 11便WTC北棟に突入、175便がハイジャックされる
08:50 77便がハイジャックされる
09:03 175便がWTC南棟に突入
09:27 93便がハイジャックされる
09:38 77便がペンタゴンに突入
10:03 93便墜落

 この時アメリカ全土で約4000機の航空機が飛行していたと言います。各地のコントロールセンターは全機を着陸させ、全土を空域封鎖、空軍に戦闘機を要請します。2時間足らずの間にほぼ同時に4機がハイジャックされたのですから、コントロールセンターは混乱を極めます。むしろ、これだけの対処が出来たことは立派と言うべきでしょう。

 93便です。4人のテロリスは、2人が爆弾を身体に括り付け起爆スイッチを掲げて客室乗務員を脅し、2人が操縦室に入りパイロットを殺して93便のコントロールを奪います。乗務員と乗客は機内電話と携帯電話で家族と連絡を取り合い、この通話記録が映画の脚本に生かされているそうです。
 出発の遅れた93便の乗客は、WTCへの突入を知ります。3機の状況を乗員乗客42名(パイロット2名は死亡)が共有し、93便も何処かに突入して自分たちは殺されることを覚悟します。どうせ殺されるならと反撃に出るわけです。乗客の一人が単発機ですが操縦経験があり、コクピットに突入して犯人から操縦桿を奪い旅客機をソフトランディングさせようというわけです。腕っぷしの強い乗客を集め、爆弾を持った犯人を襲います。乗客の必死の反撃に、犯人はタジタジ。乗客は食事を運ぶカートでをドアにぶつけてコクピットに乱入。テロリストと揉み合ううちに高度が維持できず墜落となります。

 結末は分かっていても、ドキュメントタッチの映像はリアリティーがあって手に汗を握ります。93便のテロリストは、国会議事堂かホワイトハウスへの突入を考えていたようです。テロリストに立ち向かうった42人の乗員乗客は結果としてこの狙いを阻止したことになり、『ユナイテッド93』の狙いもそこにあります。

監督:ポール・グリーングラス

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再読 浅田次郎 蒼穹の昴 (2) [日記 (2022)]

蒼穹の昴(3) (講談社文庫)
蒼穹の昴(4) (講談社文庫)1.jpg
 続きです。日清戦争の敗北によって「眠れる獅子」の正体が明らかとなり、列強による中国領土の蚕食が始まります。日本は日清戦争の勝利によって台湾、澎湖諸島、遼東半島を割譲、朝鮮は独立し1910年に日本に併合されます。ロシアは東清鉄道の敷設権を得、旅順・大連を割譲し、ドイツは膠州湾を租借地とし、イギリスは竜半島北部、山東半島北側の威海衛を、フランスは広州湾を得、ベトナム(インドシナ)を保護国化します。
 さらに大飢饉が加わり西太后の政治は垂簾聴政と非難され、紫禁城は光緒帝を担いで改革(戊戌の変法)を目指す帝党と西太后に拠る保守派の后党の権力闘争の場となります。

 小説の核には西太后が居座ります。西太后は、17歳で咸豊帝に嫁ぎ(側室)無能な夫にかわって政治を取りしきり、咸豊帝の死後実質的に4億の民を統べる皇帝となる女傑。嫡子の同治帝は放蕩のあげく脳梅に罹って死に、同治帝に跡継ぎが無かったため、西太后は咸豊帝の甥・載湉を11代皇帝・光緒帝に据え、姪を后にして政治の実権を保持します。西太后は、夫、その妻、息子、光緒帝、珍妃を暗殺したとされる稀代の悪女と言われますが、春児は

あの御方はそうして四十何年もの間、なりふりかまわずにぼろぼろの屋台骨を支えてこられたのです。

 『蒼穹の昴』は、春児と梁文秀が主人公の様ですが、実は物語のヒロインは西太后です。

 1898年、西太后は政権を光緒帝に譲り皇帝の親政が始まります。実権を握った改革派・梁啓超(『蒼穹の昴』では梁文秀)、康有為は、日本の明治維新に倣い科挙を廃止し清を立憲君主制に改造することを目指します。急激な改革は政治の混乱を招き、「戊戌の変法」はわずか100日で北洋軍を握る保守派のクーデターで潰えます。
 『蒼穹の昴』は、この失敗した清の「明治維新」を描いた小説です。登場人物は多彩で、李鴻章、袁世凱、伊藤博文、梁啓超、架空の人物として岡圭之介、トーマス・バートン、ミセス・チャンなどが登場し、「戊戌の変法」の政争、党争のなかで縦横無尽に駆け回りますが、歴史小説としては面白味に欠けます。

 ラストで、梁文秀が「戊戌の変法」の失敗を振り返ります。改革の失敗は西太后の専横や栄禄、袁世凱の奸計ではなく、変法派の内にあったと言います。

僕ら士大夫は、もちろん皇帝たる君(光緒帝)も含めて、みな民衆に施しをしようとしていた。その施しが大きければ大きいほど善政なのだと信じていた。

つまり、民衆から浮き上がっていた。民衆の苦しみを政治に取り込むことをせず、民衆に善政を施す上からの改革だから失敗したと言うのです。士大夫を自認し、四書五経をマスターして巧みに詩が詠める知識と教養(科挙制度)では、中国の近代化は出来なかったと言うのです。実態は、北洋軍を握る栄禄、袁世凱の力に破れたというべきでしょう。梁啓超、康有為の失敗は明治維新を手本にしながら、維新がスナイドル銃から生まれたことを学ばなかったことにあった?。進士が将軍の上に立ち、状元の進士が宰相となる中国の政治システムが戊戌の変法失敗の根本原因だと思うのですが。もっとも、作者にしてみればそんなことは承知の上で、オレは歴史小説を描いたのではなく、歴史の陰に隠れた孤独な権力者と進士と宦官のロマンを描いたんだ、と云うことなんでしょうね。

 本書を読んでいて不思議に思うのですが、清は征服王朝、西太后も光緒帝もヌルハチの末裔で満州族で、方や后党の袁世凱や帝党の梁啓超は漢民族。満州族に征服された漢民族のナショナリズムは無かったんでしょうか。
 李鴻章と王逸の会話に、「康有為は勤皇扶清、孫文は反清復明、目的は正反対であるのに、なぜか似ている」という下りがあります。『蒼穹の昴』シリーズは第六部まであるので、いずれ疑問の答えが描かれるのでしょう。

 自らを去勢して宦官となった春児も魅力ある人物ですが、後半では出番がありません。歴史小説ではなく「浅田講談」かというと、『壬生義士伝』『輪違屋糸里』の様な浅田節はいまひとつ。載湉(ツァイテン、光緒帝)、 少荃(シャオチュエン、李鴻章)など馴染みの無い漢字と中国読みが頻出して読み辛いです。『珍妃の井戸』を読んでみます。

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先崎彰容 吉本隆明 共同幻想論 (3)-2 (2020NHK出版) [日記 (2022)]

吉本隆明『共同幻想論』 2020年7月 (NHK100分de名著) 道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫)  続きです。
債権者、債務者
 氏族的共同体 → 部族的共同体(大和朝廷)に移行するトリガーは何か?。吉本は、道徳が何故生まれたかを考察したニーチェの『道徳の系譜』を援用します。ニーチェは人間関係を債権者と債務者の関係と捉え、「善-よいこと」施す側を債権者、施される側を債務者と考えます。スサノオ神話を例にとると、農耕をもたらしたスサノオは債権者、その利益を享受した原始農耕共同体の人々は債務者となります。

原始的な種族共同体の内部では、現在の世代はつねに先行する世代、とりけ種族草創期の世代にたいし、義務を感じています。祖先の犠牲と功績のおかげで今の自分たちがあるという確信が、祖先に同じ犠牲や功績を返済せねばならぬという負債意識を生みだすからです。つまり債務者と債権者のような関係が出来あがってしまいます。 では祖先に対し、どうやって債務を返済すればよいのか。 祝祭や拝礼、飲食物の供与が考えられるでしょう。 (p79)

 債務を返済すべきスサノオは罰を得て追放されます。人々は返せない債務を背負って生きねばならず、この負い目を解消するためにスサノオを祀る祭儀を始め、スサノオを祭神とする共同幻想が生まれたと云うわけです。ユダヤ民族の解放を唱えたイエスはローマ帝国に磔刑にされて神の子となり、冤罪で流された菅原道真も天神となったことが連想されます。「墓」を作ることも同じ位相と考えてよさそうです。共同体の先祖に対する〈良心の疚しさ〉=負い目=債務意識を解消するために祝祭や拝礼、飲食物の供え(供養)が行われ、祖先は神という共同幻想となります。

だが、それで祖先への充分な返済がなされるだろうか? この疑念がなお残り、そして大きくなる。(略) 祖先とその威力とにたいする恐怖、祖先にたいする負債の意識は、この種の論理にしたがって、種族それ自体の権力が増大するにつれ、また種族全体がいよいよ勝利を博し独立を増し尊敬され畏怖されること大となるにつれて、かならず必然的に増加する。(略) かくしてついに祖先のすがたは必然的に一個の神に変えられてしまう。ニーチェ『道徳の系譜』)

刑法の成立、国家の成立
 『魏志倭人伝』には、邪馬台国では法を犯す者は、妻子の没収や一族滅亡の罰が下される記載があり、『隋書倭国伝』には、推古天皇の時代になると殺人や強盗、姦淫は死罪となり、流罪や拷問に関する記載があるそうです。刑法が誕生しています。
 国家成立以前の古事記の時代、畔離ち、溝埋みなど農耕に関する「天つ罪」と、上通下通婚(近親相姦)、獣姦などの「国つ罪」がありました。天つ罪は農耕社会が生まれて現れた罪で、天つ罪は農耕社会誕生以前から存在する禁制ですから天つ罪、国つ罪は罪の原形と考えられます。その罪に対する罰は、共同体からの追放や髪爪を切る「祓い」であり、共同体の秩序が目的であり、罰が鞭叩きなどの個人には及んでいませんから禁制です。

 スサノオは「天つ罪」を犯し高天原を追放されました。追放は共同体の秩序を護る意味合いが強く、「国つ罪」は祓い清めによって回復されましたが、刑法の成立によって罰は財の没収や死罪など法を犯した個人への罰となります。刑法の成立は、スサノオの神話的な共同幻想から、もう一段完成度が増した国家の共同幻想となります。罰を執行する(国家)権力が成立したということです。
 オキナガタラシ姫の神託を無視した仲哀天皇が罰を受けて死ぬという仲哀天皇とオキナガタラシ姫の神話は、罰が禊祓から刑罰に移る過渡期の神話だといいます。

 共同幻想の最終形態である「国家」は、刑法によって具体化したということです。国家の成立と刑法の制定はどちらが先かというものではなく、相互補完的に成立したのでしょう。

《まとめ》
 男女の性的な結びつきによる対幻想は、狩猟、農耕など共同作業が必要とされるようになって集落という集団が生まれ、祖先のお陰で今の自分達が在るという負い目によって祖先を祀るという行為に発展します。祖先崇拝にスサノオのような象徴が生まれ、祖先崇拝は集団に共通の神を祀る共同幻想がうまれます。一方で、集団の秩序を維持するために禁制があり、集団の成長とともに禁制が刑法となり国家の原型が生まれた、そういうことだと思われます。何となく分かったので、吉本の『共同幻想論』に取り組んでみます。

ここまでの経緯
1)戦争体験、2)家族・私有財産・国家の起源、3)遠野物語、4)古事記、5)刑法(このページ)

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映画 赤い闇 (2019 ポーランド、ウクライナ、英) [日記 (2022)]

赤い闇 スターリンの冷たい大地で スペシャル・プライス[DVD]  原題、Mr. Jones。1933年のウクライナ飢饉(ホロドモール)を最初に西側に伝えたジャーナリストの話ですから、「スターリンの冷たい大地で」と副題が付きます。
 ひとりの男がタイプライター叩くシーンから始まります。「家畜の物語で怪物の話を語れば、皆も耳を貸し理解するはず」とナレーションが入ります。男はジョージ・オーウェル、男が書いているのは『動物農場』。『動物農場』は全体主義、専制政治に対する風刺寓話です。

 元首相ロイド・ジョージの外交顧問ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、ヒトラーとゲッペルスが乗る飛行機に同乗し、ヒトラーにインタヴューしてジャーナリストとして名を挙げます。独ソ戦でヒトラーと戦うことになるスターリンは、五カ年計画を掲げ集団農法による農産物の増産と農業国のソ連を重工業国への転換を図っています。ジョーンズは、公式資料に辻褄の合わない数字を発見し、世界恐慌の中でソ連だけが発展を遂げている謎を探るために、スターリンにインタヴューしようとモスクワに出掛けます。

 モスクワで当てにしていた友人の記者ポール・クレブは強盗に殺され、NYタイムスのモスクワ支局長ウォルター・デュランティ(ピーター・サースガード)を訪ね、支局員のエイダ(ヴァネッサ・カービー)からポールがスターリンの金脈を探るためウクライナの取材を計画していた事、そのために殺されたのだと教えられます。ジョーンズはウクライナに出かけ、そこで見たものは悲惨な飢饉の現実。穀倉地帯のウクライナから穀物をモスクワに送ったため飢饉が発生したのです。ソ連の発展ははこの穀物を輸出した外貨に支えられいた、つまりは搾取の上に成立していたわけです。現在の推計で、ウクライナだけで餓死者500万人だそうです。
 ソ連にとって都合の悪いことを嗅ぎ回るジョーンズは捕まります。保釈の条件は、ウクライナの飢饉は単なる噂に過ぎずソ連は順調に発展していることを、ロイド・ジョージに報告すること。条件をのめば、スパイとして捕まった6人の英国人も釈放するというもので、6人の英国人を人質にウクライナ飢饉の事実を消し去ろうというもので、ジョーンズはこれをのみ釈放されます。

 ジョーンズはウクライナ飢饉を公表し、ウォルター・デュランティは、飢饉は噂に過ぎないとジョーンズの報道を批判します。デュランティは、共産主義のソ連を持ち上げソ連は彼に便宜を図るという持ちつ持たれつのジャーナリスト。ソ連に関するレポートでピューリッツァー賞を受賞しています。ジョーンズは1935年、日本占領下の内モンゴルで取材中に誘拐され殺害されます、享年29歳。ジョーンズの殺害は、ソ連の秘密警察、NKVDによって犯された可能性が高いといわれています。
 そちなみに、中国でも毛沢東の政策によって大飢饉が起き、1000万人以上の犠牲が出ています。
 ジョーンズを通して全体主義、専制政治の悪を告発する映画です。面白いかと言われれば?ですが、ロシアのウクライナ侵攻とウクライナ国民の頑強な抵抗にはこうした背景もあったと云う意味では、観て損はありません。

監督:アグニェシュカ・ホランド
出演:ジェームズ・ノートン、ヴァネッサ・カービー、ピーター・サースガード

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再読 浅田次郎 蒼穹の昴 (1) [日記 (2022)]

蒼穹の昴(1) (講談社文庫) 蒼穹の昴(2) (講談社文庫)   『輪違屋 糸里』『一刀斎夢録』が面白かったので、浅田次郎 の大長編『蒼穹の昴』を再読。第6部まであり、義和団事件→戊戌の変法→張作霖爆殺→辛亥革命→満洲国成立→西安事件と続きますから、清朝末期と昭和史のおさらいには格好の読書です。

 光緒12年(1886)に幕が開きます。光緒帝は、「戊戌の変法」で政治改革を目論むも西太后と袁世凱のクーデターに潰され、自身も西太后に暗殺されたのではないかと言われる清の11代皇帝です。姓は愛新覚羅、征服王朝満州(韃靼)族の末裔です。清王朝は辛亥革命によって倒され、12代皇帝溥儀は清朝最後の皇帝となります。「紫禁城の黄昏」の時代の物語です。

宦官と進士
 天津近郊、静海の糞拾の少年・李春児(李春雲)と地主の息子・梁文秀が登場します。春児は自ら去勢して宦官となって西太后に仕え、梁文秀は科挙に合格して進士となり光緒帝に仕えます。1989年の「戊戌の変法」で対立する西太后vs.光緒帝の保革の政治党争と辛亥革命、中国版「維新」を春児と梁文秀を主人公に描きます。

 都の条坊制から法制まで中国から取り入れた日本が、唯一取り入れなかったものが日本の政治風土とは異質な宦官と科挙です。宦官と進士が主人公とは不思議な組み合わせです。庶民が官僚となって政治に参画するには、科挙に合格して進士となるか、男を捨てて後宮(皇帝の雑用を担うのもまた宦官)に入る道があった様です。科挙に合格するには受験勉強に財力が要り、宦官になるにはナニをチョン切らねばなりませんが、階級を飛び越える手段があったわけです。日本でも一般庶民が階級を飛び越えた例はありますが、清朝はこれを制度として持っていたことになります。春児と梁文秀の組み合わせは、小説としてはベストコンビと言えるかも知れません。

 ストーリーは占師の予言から始まります。予言は、春児は西太后の財を尽く手中に収め、文秀は皇帝の傍らで政治を司ると云うもの。この予言に絡め取られ、春児は西太后に近づく為に自ら浄身し、文秀は状元の進士となります。
 春児は、後宮の元大総菅で盲目の安徳海と出会い、「龍玉」の伝説を聞かされます。龍玉とはそれを手中にする者が中原の覇者になるという権力の象徴です。龍玉の登場によって春児と梁文秀の物語に伝奇色が加えられます。春児は、棄てられた宦官の吹き溜まり老公胡同で宦官修行をし、西太后の目に止まりたちまち小太監、出来すぎだろうw。一方の文秀は、科挙の首席である状元の進士として内閣の秘書官となり、国政を担当する軍機大臣への出世の階段を駆け登るというわけです。

征服王朝
 清は、20万の満州族が4億の漢民族を支配する征服王朝。チンギス・ハンの末裔によって満州に起こり、三代皇帝・順治帝は長城を越えて「中原に覇を唱え」ます。「中華」の誇り高い漢民族が、250年にわたって夷狄の女真に支配されたわけで、よく黙っていたものだと思うのですが、その辺りを作者が解き明かしてくれるでしょう。清は、第6代皇帝・乾隆帝の頃最盛期をむかえ、版図は黒竜江から新疆、チベットに及び、ミャンマー、ヴェトナム、ラオス、タイ、朝鮮を朝貢国とする一大帝国形成されます。現代中国は乾隆帝の遺産の上に成り立っているのかも知れませんw。19世紀になると、アヘン戦争、アロー号事件、日清戦争と外患が起き、太平天国の乱、捻軍の反乱と内憂外患に見舞われます。太平天国の鎮圧に活躍した曽国藩、李鴻章らによって軍閥が形成され、将兵の一部は「滅満興漢」の反体制組織を形成し辛亥革命へと雪崩を打つわけです。従って、『 蒼穹の昴』には曽国藩、李鴻章、袁世凱、康有為ら史上の人物も綺羅星の如く登場します。

西太后
 中国の近代化を推し進めたのは、ネガティブな意味で、咸豊帝の側室で11代皇帝同治帝の母親・西太后慈禧でしょう。同治帝、光緒帝の40年にわたって政治の実権を握りますが、その間には太平天国の乱、清仏戦争、日清戦争があり、1000万の餓死者を出す飢饉があり、西太后排除の動きが現れます。戊戌の変法は、近代化のために西太后を除くというクーデターです。紫禁城は(西太)后派と(光緒)帝党に別れ、春児は小太監として西太后に組し、文秀は補佐官として光緒帝に組するわけです。 →続き

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再読 浅田次郎 一刀斎夢録 [日記 (2022)]

一刀斎夢録 上 (文春文庫) 一刀斎夢録 下 (文春文庫)  『輪違屋 糸里』に続いて『一刀斎夢録』再読です。新選組がけっこう好きで何冊も読んできました、新選組の魅力って何なんでしょう。
 侍になりたい多摩の百姓と食い詰浪人が京に上り、京都守護職・会津藩預り新選組となって幕末の京洛で不逞浪人を斬りまくった暴力集団です。大政奉還で幕府と会津の後ろ楯を失い、鳥羽伏見の戦いで破れ、会津、函館と転戦します。近藤勇は新政府軍に捕まって斬首、土方歳三は五稜郭で討ち死。試衛館の9人が京に上ったのが文久3年(1863)、土方が討ち死したのが明治2年(1869)ですから新選組の活動はわずか7年。歴史が勝者によって書かれるなら、敗者の新選組は泡沫として歴史の片隅に追いやられたはずです。ところが、あまたの映画、ドラマ、小説となって21世紀まで語り継がれています。

 『一刀斎夢録』上巻は、試衛館の面々が京に上り芹沢鴨一派と浪士組を結成、芹沢を粛清して新選組となり池田屋事件を経て鳥羽伏見の戦で負け、富士山丸で江戸に逃げ帰るまで。お馴染みのストーリーが、副長助勤、三番隊組長・斎藤一を軸に描かれます。
 下巻は、慶応4年(1865)3/1、斎藤一が江戸から甲州に向かう所から始まります。つまり、物語の半分は新選組の負け戦の話です。斎藤一は大正4年(1915)まで生き、新選組生き残りの賊軍として会津戦争を戦い、警視庁に就職して西南戦争に出征します。新政府軍の西郷隆盛に敗れた賊軍の兵が、今度はその西郷を賊軍として討つわけです。

明治十年丑の年の二月、西郷はついに起った。下野して鹿児島に帰ったが明治六年の十一月であったゆえ、きょうか明日かと気を持たせつつ、三年余りを経たころであった。警視庁内の空気は妙であったの。多数を占める薩州人のやり場のない胸中をよそに、わしら外様は喝采した。戊辰の負け組は来たるべきこの日のために採用された。
徴兵令でかき集められた百姓の軍隊など、薩摩隼人の敵であろうものかよ。真っ向の勝負ができるは、士族で固められた近衛兵と、わしら警察官のほかはあるまい。

 斎藤一が所属したは抜刀隊。鬼神の如く刀を振るい、戊辰戦争の負け組の恨みを西南戦争で晴らし、敗者としてまた歴史の黄昏に還ってゆきます。
 「判官贔屓」と言ってしまえばそうなんでしょうが、日本の民衆には歴史的に敗者に寄り添う心情があります。敗者平家の物語が盲目の琵琶法師によって語り継がれるわけです。新選組が我々を惹き付けるのはこれでしょう。『一刀斎夢録』も同じ位相で成り立っています。面白いのは西郷隆盛もまた敗者であること。西郷は徳川幕府を倒し、参議、陸軍大将と位人臣を極め、故郷薩摩に帰って私学党に担がれて西南戦争を起こすわけです。西郷に清政府軍を倒そうという意思は感じられず、不平士族の反乱と言っていいのかどうか。

この戦はどこかおかしい。戊辰の戦とはまるでちがう、とな。 どうちがうのかと問われても困るのじゃが、たとえて言うなら目に映る景色が、 書割のように思えた。迫りくる薩軍の姿が傀儡のように見えた。

斎藤は西郷は城山を枕に討ち死にしたことを聞いて、西南戦争は西郷と大久保が仕組んだ猿芝居だっと確信します。

徴兵令でかき集められた百姓ばかりの軍隊は、戦の何たるかを知った。指揮官たちは近代戦の貴重な体験をなした。海軍も艦隊の総力を進め、日向灘やら錦江湾から艦砲の実弾射撃をした。輸送も通信も兵站も、すべて全力を以て実験された。

新政府は、佐賀の乱、神風の乱などの不平士族を鎮圧し、国民的に人気の高い西郷の反乱を鎮めることで政府の力を示し、近代戦の実験、訓練までしたと云うのです。そう考えると西郷は明治維新の表と裏の功労者です。上野公園に反逆者である西郷像が建っていることも頷けます。

わしは妙な錯覚を抱いた。戊辰の戦よりこっちは、すべて夢であったのではなかろうか、とな。鳥羽伏見か甲州か、あるいは白河か会津かでわしらはとうに死んでおり、そののちの出来事はすべて未練が生じせしめた、夢であったのではないか、と。

邯鄲の夢です。

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再読 浅田次郎 輪違屋 糸里 [日記 (2022)]

輪違屋糸里 上 (文春文庫) 輪違屋糸里 下 (文春文庫)  浅田次郎の新選組三部作、『壬生義士伝』『輪違屋 糸里』『一刀斎夢録』の一巻です。壬生浪士組の内紛、芹沢鴨一派の粛清を、島原輪違屋の芸伎で土方の想い人・糸里、平山の情人の桔梗屋の吉栄、芹沢の情人・お梅、壬生郷士・八木家の女房・おまさ、前川家のお勝の視点から描かれます。この5人は、いずれも近藤一派の芹沢暗殺現場にいた女性ですから、『輪違屋 糸里』は芹沢粛清の物語です。

 本書では、糸里は土方に惚れ土方も糸里を憎からず思い、周囲もそれを認めているという設定です。その糸里が何故平間と同衾し、芹沢暗殺事件に巻き込まれたのか?。この謎がストーリーを牽引します。

 輪違屋の音羽太夫が芹沢鴨の無礼討で斬り殺されます。芹沢は、水戸天狗党の生き残りで、京都守護職会津藩の「お預かり」浪士組の局長。どの小説でもそうなんですが、商家から軍資金を強要し、不逞浪士ばかりか庶民まで惨殺する酒乱で性格破綻者。浪士組は京都の治安を護る警察機関です。千人からの藩士を京都に駐屯させている会津藩が、わずか23人の浪人を雇う不思議を、八木の女房のおまさが解説します。

会津さんが浪士組をお預かりにならはったいうのんは、みなさんがお強いからいうことだけやのうて、ほかにわけがあるのやないかて思うんどす。 会津さんはお手を汚しとうはないのと ちゃいますか。のちのち恨みを買うたら かなんさけ、人斬りのお務めは浪士組にさせるのとちゃいますか。もし、そないな心積りでいたはるのなら、浪士組は とことん町衆に毛嫌いされる悪者のほうが都合ええのんどすやろ 芹沢はんがあないな無体をしやはったのにお構いなしいうのんは、悪者のほうがええいうこっちゃと、わてには思えますのやけど(上 p173)

 毒をもって毒を制すというわけで、「壬生浪(みぶろ)」と蔑まれ京都で嫌われれば嫌われるほど会津藩にとっては都合がいいわけです。これが音羽太夫を斬り殺した芹沢を「お構いなし」とした理由です。

 8月13日に芹沢は御所に近い大和屋を焼き討ちします。裏に会津藩の指示があったというです。長州が天皇親政のクーデターを計画しているという噂が流れます。会津藩は京都勤番の交替で国許に向けて出発させた兵を呼び戻す必要が生じ、そのため京都で事件を起こすしたと云うわけです。大和屋焼討事件の5日後に「八月十八日の政変」が起こっていますから、ナルホド。浪士組は完全武装で政変に出動し、その功で会津藩は「新選組」の名前を与えます。
 会津藩主からお呼びが掛かり、狼藉が目に余る芹沢を斬れという指示が出ます。芹沢をけしかけたのは会津藩ですが、もはや利用価値がなくなった、新選組は近藤が率いればいいと云う判断です。多くの小説では芹沢暗殺は近藤一派よる「粛清」ということになっていますが、裏に会津藩いたという新説。一般に、芹沢鴨は傍若無人の酒乱、性格破綻者の様に描かれていますが、本書では新選組の基礎を築いたのは芹沢です。お梅、おまさ、お勝によると、謹言実直だか世事に疎い近藤、人間の皮を被った鬼の土方、剣と愛嬌の他には何の取り柄も無い沖田、とヒーローも形無し。本書は芹沢鴨復権の書です。
 『輪違屋 糸里』には、近藤勇以下お馴染みの面々が登場しますが、主役は女たち。糸里、吉栄、おまさ、お勝、お梅の5人。彼女たちが新選組の男たちを棚卸し「世の男すべては、女のやさしさを食ろうて生きている」と嘯き、男もまた、

どうやら女というのは、剣を持たずに斬り合いができるらしい・・・この戦場には、刀を持たぬ四人の女がいるのだ。傍観者でもなく、犠牲者でもない、明らかな戦の当事者として...。

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八木邸の芹沢鴨の殺された部屋      前川邸

タグ:読書
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月食 [日記 (2022)]

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f/8,1/250,iso1600                              f/8,1/160,iso6400

 月食だと云うので久々にデジカメ(CanonのEosKissX5+2500mm望遠)出してみました。こちらの記事を参考に色々やってみたのですが、なかなか難しい。普段はオートですが、シャッター速度、F、ISOを設定するマニュアル操作です。ネックはフォーカス、月が小さいので合っているのかどう?でシャッター押すわけです。やはり修行が必要な様です。これを機会に、少しデジカメ触ってみよう。
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 友人から届いた画像、F/6.3、1/8、ISO12800、WBオート、220mm望遠だそうです。天王星まで写るんですねぇ。

タグ:デジカメ
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かりん酒 [日記 (2022)]

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 1年経ったので試飲してみました、そこそこイケます。今年はもっと漬けるかw。種を植えたところ発芽、盆栽にでも仕立ててみます。

タグ:絵日記
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