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映画 コクリコ坂から(2011日) [日記 (2020)]

コクリコ坂から [DVD]  ジブリのアニメ、監督は宮崎吾朗。
 舞台は東京オリンピックを控えた1963年の横浜。海を見下ろす高台に住む高校生のメルは、毎朝庭のポールに「航海の安全を祈る」という信号旗(旗旒信号)を掲げます。船乗りであった父の無事を祈る旗旒信号で、父親は朝鮮戦争亡くなっていますが、彼女はその後も旗を掲げ続けています。母親が渡米し、メルは妹弟とともに祖母の営む下宿屋「コクリコ荘」に身を寄せているという設定。もう一人の主人公・風間俊は、父母が亡くな亡くなって孤児となり、父親の友人・風間の養子となったという事情を抱えています。
 メルの父、俊の実父、俊の育ての父・風間明雄の3人が旧海軍の制服姿で写った写真が登場します。敗戦と朝鮮戦争による復興、オリンピックを開催できるまでになった高度成長の真っ只中のメルと俊の青春です。

 映画は、メルと俊の通う高校のクラブ部室建て替え事件と、メルと俊の関係の2つの物語から成り立っています。
 高校のクラブ室が集まる建物「カルチェラタン」の建て替え計画が浮上し、俊たちはカルチェラタン存続を訴える全校集会を開きます。この全校集会は、60年安保を経て高校生に及んだ(カッコ付きの)戦後民主主義であり、俊たちがやがて迎えるであろう全共闘運動のメタファーともいえます、考えすぎかも知れませんが。カルチェラタンは、全共闘運動において、フランス五月革命を模して「解放区」と呼ばれました。映画の「カルチェラタン」はまさに教師たちからの解放区さながらです。俊たちは、ガリ版刷りのビラ「カルチェラタン」を登校する学生にビラを配るシーンには既視感を覚えます。メルが「ガリ切り」をするシーンがありますが、これが2011年の観客には分かるのかどうか。
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 1963年              カルチェラタン

 メルと俊の関係が映画のプロットとなっていますが、重要なのは二人の父親たちです。メルの父、俊の実父、俊の育ての父風間の3人が写った写真から、親友であった3人の世代と、その子供である俊とメルの世代が出会います。孤児となった俊を、メルの父はこれも子供を亡くした風間に託します。これが俊とメルが兄妹である誤解を生み、お互いに惹かれ合う二人の父親探しが始まります。高度成長を生きる俊とメルの世代が、戦争と敗戦、戦後の混乱の時代に生きた父親たちの世代と出会うことになります。『コクリコ坂から』というアニメの、たぶんこれがテーマです。
 ラストで、メルは「航海の安全を祈る」という旗旒信号を掲げます。それは、死んでいったメルの父、俊の実父への鎮魂であり、俊の育ての父の安全を祈る旗旒信号です。高度成長を生きる(団塊の)世代が父親たちの世代に向けたメッセージなのです。

 『コクリコ坂から』は何処を切っても団塊の世代の映画です。宮崎駿が脚本を担当していますから、この映画は宮崎吾朗の映画と言うよりは、宮崎駿の映画ではないかと思います。

監督:宮崎吾朗
脚本:宮崎駿、丹羽圭子
原作:佐山哲郎、高橋千鶴
出演(声):長澤まさみ 岡田准一

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