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映画 軍中楽園(2014台湾) [日記 (2020)]

軍中楽園 [DVD]  台湾の金門島にある「慰安所」を舞台にした映画です。金門島は中国本土からわずか2kmの距離、国民党が台湾に移ってから中華民国がこの島を領土としています。中華人民共和国は1958年に金門島に侵攻しますが失敗、映画の1969年時点では緊張関係が続いています。そんな金門島に慰安所があった、しかも1969年に、という話です。

 徴兵で中華民国軍に入った小宝(阮経天)は、金門島に配属され特殊部隊に選抜されます。ところが泳げないことがバレて、教官の老張(陳建斌)に831部隊に飛ばされます。831部隊とは、軍に付属する「特約茶店」=慰安所を管理する部隊で、慰安婦を含む総称かもしれません。慰安所は1950年代から1974年まで実在したようです。金門島は戦地ですが、街もあるわけで、娼館は普通民営のはずですが、軍が慰安婦を抱えていたことはあるいは日本軍の影響かも知れません。慰安所は世界中の軍隊にあったようですが、1969年には珍しい存在。
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 特約茶店               娼婦、妮妮
 慰安婦の物語りですが、決して「慰安婦問題」ではなく、兵士と性の問題でもなく、娼館を舞台にした男と女の物語です。大陸からの侵攻から10年が経って敵の砲撃も演習の域を出ず、金門島の軍隊も平時の軍隊で慰安所は盛況。小宝は、慰安所を訪れる兵士たちに「娯楽券」を売り、慰安所の監理点検から慰安婦たちの諍いの仲裁と、娼館を切り盛りします。男と女の集まる場所ですから、当然ドラマがあります。

華興と莎莎
 小宝の同僚、華興と娼婦莎莎。補給部隊に配属された華興は、劣悪な環境とイジメめから、莎莎と大陸に逃亡します。莎莎の頭を丸刈りにし、兵士の服を着せて慰安所から連れ出し、ふたりで大陸に泳ぎ出します。

老張と阿嬌
 小宝の元上司の老張と娼婦阿嬌。老張は、若い頃に国民党軍に拉致され台湾に連れて来られた兵士。所謂外省人で、家族は大陸にいます。中年になり、慰安婦の阿嬌(陳意涵)の馴染みとなって結婚を決意。結納金を持参しプロポーズしますが、阿嬌は「朝起きて夫の顔を見て、自分が娼婦であったことを思い出す生活は出来ない」と言います。思い余った老張は阿嬌を殺してしまいます。慰安所から抜け出し結婚を夢見た娼婦と、家族を失った中年男の末路です。

小宝と妮妮
 小宝と娼婦妮妮(ニーニー)。小宝は電灯を修理したことで妮妮(万茜)と親しくなります。小宝は何処か影のある妮妮と彼女の歌う「帰らざる河」に惹かれます。妮妮は小宝にギターを教え、ふたりは急速に近づきます。妮妮の歌う「帰らざる河」のリフレイン”no return”は『軍中楽園』のバックグラウンドです。
 やがて妮妮の過去が明らかになります。彼女はDVのすえ夫を殺し、特約茶店で働けば減刑されると言われ慰安所に流れてきたのでした。小宝は、娼婦達を街に連れ出した際、妮妮がひとり抜け出して電話をかける姿を目撃します。小宝に問われて、ひとり息子に電話していたこと、早く刑期を終えてに帰らないと息子は母親の顔を忘れてしまう、と答えます。

 ふたりは男と女として関係を結ぶわけですが、小宝は寸前に「初めての相手は...」と言って身を引きます。ここまで、映画は小宝と妮妮の物語として進行してきました。DVから夫を殺し子供のために慰安所に来たというヒロインに相応しい過去を用意し、”月下美人”を見るため深夜に慰安所を抜け出し、夜の街を手に手を取って走る幻想的なシーンまであります。クライマックスで「初めての相手に娼婦は嫌だ」とはどういうことなんでしょうか。ストーリー上、妮妮をひとりの娼婦として突き放すことは有りえません。娼婦ではなくひとりの女性として妮妮を抱きたいという小宝の切ない想いなんでしょう?。妮妮は恩赦となり、小宝にギターと腕時計を残して慰安所を去ります。

 小宝は、妮妮出す当てのない手紙を書きます、「もし人生をやり直せて、別の選択をしていたら、すべては違っていたのか。よく君を思い出す...また会えるかは分からないけど、君に会いたい」と。
 小宝もまた除隊となって娼婦たちに見送られて慰安所を去ります。小宝は出す当ての無い手紙を出したのかも知れません。

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 幕が下りた後、3組のカップルの「あり得たかも知れない」写真が登場します。小宝と妮妮と子供が幸せそうに写る写真、小宝と妮妮は再会し結婚したのかもしれない。大陸に渡った華興と莎莎が天安門で並んで写る写真、無事大陸に泳ぎ着きふたりで暮らしているのかもしれない。3枚目は、餃子店を営む老張と子供を抱く阿嬌。阿嬌は亡くなっていますから、これはあり得ませんが、退役して餃子店を開くのが老張の夢でした。いずれも、娼婦と彼女を愛した男たちのあり得たかも知れない世界です。台湾と日本、共通するものがあるようです。

 台湾映画は『セデック・バレ』に続いて2本目、けっこう面白いです。

監督:鈕承澤
出演:阮経天、万茜、陳建斌、陳意涵

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映画 イエスタデイ (2019英米) [日記 (2020)]

イエスタデイ 4K Ultra HD+ブルーレイ[4K ULTRA HD + Blu-ray]  ビートルズがいない(いなかった)世界の話です、つまりファンタジー。
 元中学校教師の売れないシンガーソングライター、ジャック(ヒメーシュ・パテル)の物語です。ジャックは、売れる日を目指してスパーマーケットでアルバイトをしながら、あちこちのイベントで修行中。髭面で遅刻の多いジャックは、このアルバイトもクビ寸前で、絵に書いたような落ちこぼれ。ジャックの歌を理解してくれるのは、幼馴染のエリー(リリー・ジェームズ)ただ一人。エリーは、教師をしながらマネージャー兼運転手をしてジャックを支えています。ジャックの友人は、”もうヤッタのか?”と下世話なツッコミをいれますが、あくまでも歌手とマネージャー関係。このインド系イギリス人と白人の中学校教師のコンビは、なかなか微笑ましいです。

 ジャックが自転車で車と衝突し、全世界が12秒間停電、目を覚ますと世界はビートルズが存在しない(存在しなかった)世界となります。パラレル・ワールド云々と考えてしまいますが、そういうのは無関係。要はビートルズです。退院したジャックが、新しいギターで”Yestaday”を弾き語りすると、友人たちは彼の「新作」を絶賛し、ビートルズの曲だと言うジャックに、「ビートルズって誰だ?」。netで検索してもビートルズはヒットせず、検索結果は「甲虫」。ジョン・レノンもポール・マッカートニーもヒットせず、世界からビートルズが消えてしまった!。何故か、ハリー・ポッターも、タバコも、コカコーラも消えてしまった!w。

 ジャックは次々にビートルズの曲を歌い、世間は絶賛。エド・シーラン(本人出演)がジャックの才能を評価し、ジャックはコンサートツアーの前座を務めるようになり、モスクワではBack in the U.S.S.R.を歌ってシーランを食ってしまいます。シーランが持ち時間10分間の作曲勝負を仕掛け、ジャックは”The Long And Winding Road”を披露し、シーランは「天才だ!」と兜を脱ぎます。
 という具合に、ビートルのヒット曲のオンパレード、音楽に疎い私でも知っている曲が次々に出て楽しめます。全曲ヒメーシュ・パテルが歌っているらしいです。

 ビートルズの曲を次々に復活させ、LAの大物プロデューサーが付いてジャックは大スターとなります。マネージャー兼運転手のエリーはどうしたかというと、スターのマネージャーより中学教師を選択します。売れないジャックは支えますが、大スターになったジャックに私は必要ない、というよりエリーは一向に振り向いてくれないジャックを諦めた、ということの様です。やっと自分の本心を探り当てたジャックは、リバプールでエリーと会い、いいところまで行きますがフラれます。フラれた後で歌うのが”Help!”。つまり、この映画は「ビートルズがいない世界」とラブストーリーの「二本立て」だったわけです。

 世界にビートルズを知っている人間は誰もいませんが、ジャックには盗作の後ろめたさがついて回ります。コンサートで「黄色い潜水艦」を掲げる聴衆がいて肝を冷やします。で、ビートルズを知っている人間は誰もいないのか?、実はふたりだけいたのです。このふたりが楽屋にジャックを訪ねジャックは観念。ふたりの口から出たのは非難ではなく、「ビートルズの歌の無い世界は耐えられない、ビートルズを復活させてくれてありがとう!」という感謝の言葉。

 ジャックはビートルズを歌い続けるのか?、エリーの愛を取り戻せるのか?。さぁどう決着を付けるのか?。

 お勧めです。そうそう、ビートルズを結成しなかった、従って暗殺されなかった78歳のジョン・レノンが登場します!。久々に”Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band”でも聴いてみようかと思います。
 監督のダニー・ボイルは、『28日後...』『スラムドッグ$ミリオネア』『127時間』のあのダニー・ボイルです。

監督:ダニー・ボイル
出演:ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ、ケイト・マッキノン、エド・シーラン

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スマホ動画のDVD変換 DVD Flic [日記 (2020)]

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 スマホの動画を結合してDVDに焼いて渡したところ、家のビデオで再生できな!、とクレームがきました。mp4だったのでレコーダーで再生出来なかったようで、dvdフォーマットに変換が必要です。昔AVI→DVD変換をやったことがあり、PCにも〈DVD Flick〉というアプリが入っています。今どき動画はMP4ですが、私の古いolympus E-PL1sはAVIフォーマットでした。当時のメモを見ると、ムービーメーカーでAVI→WMV変換して、DVD FlickでWMV →ビデオ変換しています。ムービーメーカーの保存でyoutubeを選ぶとMP4には変換してくれるみたいですが、AVI→DVD変換は出来なかった?。

 ともかくMP4ファイルはあるので、DVD FlickでDVD変換をしてみました。至って簡単、変換するファイルをドラッグ&ドロップして、create dvdをクリックするだけでDVDフォーマットに変換してくれます。ImgBurnが同梱されているので、DVDメディアに焼くこともできます。

 動画は興味が無かったのですが、前回、今回といい勉強になりました。古いdynabook r731では一連の作業は荷が重いようで、ファンが唸りを上げて排気口からは熱風。普段用途には問題は無いのですが、動画を扱うにははさすが無理があります。
 確かyotubeにアップロードしていた筈 →昔の動画が出てきました。懐かしいので掲載w。
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 骨董品のdybabook         初めてupしたyoutube(2014)


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金完燮 親日派のための弁明 2 ③  教科書問題 (扶桑社2004) [日記 (2020)]

親日派のための弁明2 続きです。
誰が歴史を歪曲しているか----日韓教科書問題によせて
 2001年に、韓国政府が日本の歴史教科書の記述に訂正を迫った「日韓教科書問題」です。35項目(本書では19項目)にわたって、「それは間違っている、修正せよ」と公式に迫った内政干渉です。韓国の「歴史認識」がよく分かって面白いです。ちなみに、日本政府は35項目のうち、2項目については出版社に訂正を求め、残りは修正を拒否しています。
 教科書の記述、韓国政府の修正要求、日本政府の回答、(著者による)解説の4項目が併記されます。

壬辰倭乱(文禄・慶長の役)
教科書
 朝鮮への出兵---秀吉は、さらに中国の明を征服し・・・東アジアからインドまでも支配しようという巨大な夢にとりつかれ、1592(文禄元)年、5万の大軍を朝鮮に送った。 ……日本軍はたちまち首都の漢 城 (現在のソウル)をおとし、……明との交渉は整わず、1597(慶長 2)年、日本は再び1万の大軍で朝鮮に攻め込んだ。・・・云々

韓国政府の修正要求
 題名の「出兵」を「朝鮮侵略」に修正しなければならない。「出兵」という用語は、朝鮮が間違いを犯してこれを膺懲するための軍事的行為と誤解されやすいため、日本の一方的な軍事的侵略であったことを題名から明らかにすべきである。また、壬辰倭乱の勃発要因を、明国を征服してアジアの大帝国を建てようとする大義名分、ないしは豊臣秀吉の個人的な妄想とだけ説明している。しかし、壬辰倭乱の原因は豊臣秀吉の個人的な英雄心、日本内封建領主の不満をなだめるなどの、「名分のない戦争」とみるのが一般的である。つまり、壬辰倭乱の原因は、国内の矛盾を海外に向かわせて政権の安定を図ろうとした日本の内政ないしは東アジア国際関係の中で説明されるのが正しい・・・云々

日本政府の回答
 我が国の学界においては、「文禄・慶長の役」「朝鮮出兵」「朝鮮侵略」などの呼称が広く認められており、このような学説状況に照らして、明白な誤りとは言えず、制度上、訂正を求めることはできない。(出兵の目的に関して) 我が国の学界においては、豊臣秀吉が東アジアを征服する構想をもっていたことは広く認められており、その背景については種々の推測がなされている。このような学説状況に照らして、明白な誤りとは言えず、制度上、訂正を求めることはできない。・・・云々

(著者による)解説
 ・・・日本政府に対し、出版社に「出兵」を「侵略」と修正するよう指示しろと要求したり具体的な事件の解釈まで提示したりするのは、韓国の画一的な官僚主義を日本にまで押し付け非常識な要求ではなかろうか。いくつかの周辺国が絡んだ事件を、自国の立場を最大限弁護して記述するのは国際的に容認された慣例であるため、日本にばかり歴史記述において「厳正な世界主義」を要求するのは公平さの面でも無理な要求だと考えられる。・・・自らがまず世界主義を実践してから他国に要求するならば、ある程度説得力があるが、自分は徹底した国粋主義に立脚した歴史記述に固執し、日本にばかり客観的になれと要求したなら、返されるのは嘲笑だけである。・・・云々

 韓国政府は、秀吉の朝鮮派兵をどうあっても「侵略」としたいようです。秀吉がこれを聞けば、侵略したいのは明であって朝鮮などは眼中にない、通過しただけだ、と言うでしょねw。日本政府の回答は、概ね我が国の学説を持ち出して韓国政府の修正要求を軽く否します。親日派の著者の解説は言わずもがな。歴史認識は、学問の世界ではなく政治の世界、イデオロギーの世界であることがよく分かります。

甲申事変
 金玉均を「親日派」とした教科書に対して、韓国政府は、親日派を「開化派」に訂正せよいいます。金玉均は日本に留学し日本の後援でクーデターを起こし、失敗すると日本に亡命しています。開化派ですが、金玉均は親日と呼ばれても問題はありません。朝鮮改革の一翼を担った金玉均が親日派と呼ばれることは、親日=悪という今日の韓国のイデオロギーに抵触しますから、韓国政府は訂正求めたわけです。日本政府の回答は、「学説状況の照らして、明白な誤りとは言えず、制度上、訂正を求めることは出来ない」。

甲午農民戦争(東学党の乱)
 教科書の記載「農民暴動」は誤りであり、甲午農民戦争は「朝鮮農民の反封建・反外勢運動」であって「乱」や「暴動」ではない、訂正せよといいます。甲午農民戦争は、李朝役人の横領など不正に端を発した暴動で、拡大して李朝の腐敗に対する告発へと発展しますから、韓国政府が革命運動だ!と主張したいのも分からないことはありませんが、「反封建・反外勢運動」の主張にはやはり無理があります。

安重根
 伊藤博文暗殺を暗殺した安重根について、その記述が無いことを韓国政府は問題にし、「安重根の義挙」と書くように要請します。これは従軍慰安婦についても同様で、故意に隠蔽していると非難します。日本政府は、「我が国の教科書検定制度では、学習指導要領の範囲内で、具体的にどのような歴史的事実を取り上げ、それをどのように記述するかは、執筆者の判断に委ねられている」と否します。

 イデオロギーと教育の問題は考えさせられます。韓国の高校歴史教科書を読みましたが、日本の教科書に比べ近現代の比重が異様に高く反日に偏向しています。日本政府による教科書問題の提議があってもよさそうなものですw。

日本軍のヒューマニズム--従軍慰安婦

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スマホの動画結合 ムービーメーカー [日記 (2020)]

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 スマホで手軽にビデオが撮れるので、やたらと動画ファイルが増えてきました。スマホの動画は数10秒のものが多く、コマギレ状態でアチコチに散らばってます。これをひと括りに纏めようと思います。

 win10からはムービーメーカーが消えて、代わりに〈フォト〉を使うようです。ムービーメーカーは直感で使えましたがフォトは使い難いです。マイクロソフトのサイトからは消えています。何処かに落ちているだろうと探すと、Windows Essentials 2012がInternet Archive(国立国会図書館推奨?)にありました。まさかウィルスがくっついているようなことはないと思いますが、自己責任で。ムービーメーカーはWindows Essentialsに同梱されています。win10でも問題なく使えます。

 使い方は、動画ファイルをムービーメーカーにドロップするだけ。タイトルを付ける、ファイルの順番を入れ換える、動画と画像を結合する、フェードイン・フェードアウトが可能、字幕やBGMやナレーションを入れられる、と基本的なことが出来ます。ファイル保存で、高画質、Android、iPhone用とファイルサイズが選べ、Youtube、Facebook、OneDriveにアップロードする機能も付いています。高解像度ディスプレイ=282Mのファイルが、androidフォン(中)=120M、YouTube=62.8Mに圧縮されます。
 便利です、何よりも直感的に使えるのがいいです。

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映画 コクリコ坂から(2011日) [日記 (2020)]

コクリコ坂から [DVD]  ジブリのアニメ、監督は宮崎吾朗。
 舞台は東京オリンピックを控えた1963年の横浜。海を見下ろす高台に住む高校生のメルは、毎朝庭のポールに「航海の安全を祈る」という信号旗(旗旒信号)を掲げます。船乗りであった父の無事を祈る旗旒信号で、父親は朝鮮戦争亡くなっていますが、彼女はその後も旗を掲げ続けています。母親が渡米し、メルは妹弟とともに祖母の営む下宿屋「コクリコ荘」に身を寄せているという設定。もう一人の主人公・風間俊は、父母が亡くな亡くなって孤児となり、父親の友人・風間の養子となったという事情を抱えています。
 メルの父、俊の実父、俊の育ての父・風間明雄の3人が旧海軍の制服姿で写った写真が登場します。敗戦と朝鮮戦争による復興、オリンピックを開催できるまでになった高度成長の真っ只中のメルと俊の青春です。

 映画は、メルと俊の通う高校のクラブ部室建て替え事件と、メルと俊の関係の2つの物語から成り立っています。
 高校のクラブ室が集まる建物「カルチェラタン」の建て替え計画が浮上し、俊たちはカルチェラタン存続を訴える全校集会を開きます。この全校集会は、60年安保を経て高校生に及んだ(カッコ付きの)戦後民主主義であり、俊たちがやがて迎えるであろう全共闘運動のメタファーともいえます、考えすぎかも知れませんが。カルチェラタンは、全共闘運動において、フランス五月革命を模して「解放区」と呼ばれました。映画の「カルチェラタン」はまさに教師たちからの解放区さながらです。俊たちは、ガリ版刷りのビラ「カルチェラタン」を登校する学生にビラを配るシーンには既視感を覚えます。メルが「ガリ切り」をするシーンがありますが、これが2011年の観客には分かるのかどうか。
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 1963年              カルチェラタン

 メルと俊の関係が映画のプロットとなっていますが、重要なのは二人の父親たちです。メルの父、俊の実父、俊の育ての父風間の3人が写った写真から、親友であった3人の世代と、その子供である俊とメルの世代が出会います。孤児となった俊を、メルの父はこれも子供を亡くした風間に託します。これが俊とメルが兄妹である誤解を生み、お互いに惹かれ合う二人の父親探しが始まります。高度成長を生きる俊とメルの世代が、戦争と敗戦、戦後の混乱の時代に生きた父親たちの世代と出会うことになります。『コクリコ坂から』というアニメの、たぶんこれがテーマです。
 ラストで、メルは「航海の安全を祈る」という旗旒信号を掲げます。それは、死んでいったメルの父、俊の実父への鎮魂であり、俊の育ての父の安全を祈る旗旒信号です。高度成長を生きる(団塊の)世代が父親たちの世代に向けたメッセージなのです。

 『コクリコ坂から』は何処を切っても団塊の世代の映画です。宮崎駿が脚本を担当していますから、この映画は宮崎吾朗の映画と言うよりは、宮崎駿の映画ではないかと思います。

監督:宮崎吾朗
脚本:宮崎駿、丹羽圭子
原作:佐山哲郎、高橋千鶴
出演(声):長澤まさみ 岡田准一

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金完燮 親日派のための弁明 2 ② 独立軍、植民地近代化論 (扶桑社2004) [日記 (2020)]

親日派のための弁明2  続きです。
独立軍の正体
 三一運動の後、独立運動は総督府の統治が十分に及ばない満州東部の間島の独立軍が担うことになります。満州の抗日パルチザンから出た金日成が北朝鮮を建国しますから、金日成の正体かと期待したのですが、「馬賊」の話でしたw。
 著者によると

「満州の独立軍」というものが存在したのか、疑問である。彼らは当時、治安不在だった満州地域で組織された朝鮮人馬賊団であり、同胞の財産を奪い、殺人や拉致、強姦、放火など、治安を乱し犯罪を行った、盗賊団のような存在にすぎなかったと思われる。その行為においては中国人馬賊団との差はなく、ただ一つ、独立運動を語ったということだけが違う。

とミモフタモもありません。彼らは、匪賊、兵匪、土匪、共匪(共産ゲリラ)、総督府の呼称では鮮匪など様々な名前で呼ばれたようです。「大韓民国臨時政府」配下の軍隊なら資料が残っていそうなものですが、相手が賊ですから資料が乏しいようで、著者が目を付けたのが1920~1940年の「朝鮮日報」のデータベース。独立団、馬賊、匪賊に関連した記事が395回登場します。例えば

〈検索:抗日〉
(1921年)
3/9 通化住民の現状。排日朝鮮人と馬賊らの跋扈により十里行くにも警官と同行
3/31 寛甸県で農民八名銃殺。朝鮮独立団員が来襲、農民を銃殺。五十名の独立団が朝鮮に侵入計画中
3/31 安岳邑に独立団突入。六穴砲を向けて百五十ファン強奪
5/5 旅行中の日本人を狙撃。おそらく排日朝鮮人かシナ馬賊のしわざ
5/6 独立団の軍資金募集と称してあちこちで強奪 ・・・後略
〈検索:馬賊〉
1920年12/17 十九道溝の昌興商会主人・崔鎮國、馬賊に銃殺される
1921年1/29 国境馬賊団の跳梁。民家七戸を焼却、女子四名を人質、良民八名を惨殺、金一万一千ウォン強奪して逃走
1922年5/8通化県に馬賊猖蹶。馬賊首領の柳青山とその部下が通化県七道溝付近に出没し人民の被害が激しい
1922年7/5 官兵装を着た馬賊団の横行。八道溝で富豪六名を襲撃して人質とする ・・・後略

といった記事がズラリと並びます。独立軍と名乗り(時には名乗らず)朝鮮人の武装集団が同族から軍資金、義援金と称して金品を強奪し、殺害、拉致を繰り返しています。記事に載らなかった犯行も含めると膨大な数になりそうです。こういう連中が独立後に帰国して「抗日戦士」、「独立軍」を名乗り、日本と戦って独立を勝ち取ったという歴史を望む政府は、匪賊、馬賊を「独立軍」と遇したのです。なかにはその名に値する独立軍もいたにしてもです。イザベラ・バードは『朝鮮紀行』で、沿海州の朝鮮人は両班の搾取を受けることなく裕福だった、と書いていますから、略奪する金品食料が豊富だったのかも知れません。
 「普天堡の戦い」という共産党を名乗る馬賊事件もあります。

朴金喆の率いる祖国光復会(朝鮮語版)の一隊(のちの甲山派)の2隊が約300戸ある普天堡村という朝鮮人が大多数を占める村の警察署の襲撃・放火後に無差別に金品を強奪し、役場や消防会館、郵便局、小学校などに略奪・放火を行った赤色テロ事件である。警察官だけでなく、幼児、料理店経営者を含む一般人が死傷したが、日本に朝鮮人共産主義者らが勝利したとして神話として美化されている。(wikipedia)

朴金喆は後に北朝鮮の党書記などの要職を務めていますから、共産党系の抗日パルチザンも馬賊、匪賊をやっていたわけです。金日成はよもやとは思いますが...。

韓国の学者は、一九一九年の万歳運動以後、満州と沿海州地域に西路軍 政署、北路軍政署、光復軍、韓国独立軍、大韓独立軍、正義府、参議府、新民府など数多くの独立運動機関ができて、抗日武装闘争を敢行したかのように主張している。しかし、その実情をみると、彼らの実態は独立運動に事寄せて同胞から略奪を行った、朝鮮人馬賊団だったのである。

これが、独立軍の正体だといいます。さらに、

 日帝時代、朝鮮の独立運動家は主に海外に滞留し、同胞たちから募金を集めたり「強奪」したりしながら組織を維持した。その中には、分離独立だけを朝鮮民族の至高の善と信じる献身的な人もいただろうが、大部分は独立運動を名分に無為徒食し、同胞の財産を集団略奪したルンペン集団である。海外の朝鮮人密集地域で、日本軍に追われているということを理由にいつでも武器をもち集団略奪ができたため、朝鮮人であっても馬賊集団と独立軍を区別するのは難しかった。事実、満州と沿海州、中国などの地に、本当の意味での独立軍といえる集団はほとんど存在しなかったと思われる。
 東北アジアをさすらっていたこのルンペン集団は、終戦後、集団帰国して政治に飛び込んだが、米国を背負った李承晩に押し出され、政権掌握に失敗した。李承晩もやはり朝鮮王朝に忠誠を誓い、長い間、独立運動をしていたため、日本と親日派に対する敵限心は誰にも負けなかった。このため、戦後の韓国では誰もが日帝時代に総督府に抵抗したとか、少なくとも協調はしなかったとか、主張せざるをえなかった。このようなムードが次第に強まり、反日は韓国の基本統治イデオロギーになったのである。

そこまで言うか、です。

穂積産業革命

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8月の庭 [日記 (2020)]

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バジル
 ムクゲは挿し木して2年で開花。カボチャは種を植えたら芽が出たと娘から貰ったもの。葉が枯れたら食べてみますw。8月の庭は寂しいです。バラとカンナとタマスダレ、朝顔くらい。そう言えば、源氏の「朝顔」がありましたね。

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金完燮 親日派のための弁明2 ① 三一運動 (扶桑社2004) [日記 (2020)]

親日派のための弁明〈2〉英雄の虚像、日帝の実像 (扶桑社文庫)  『親日派のための弁明』の続編ですが、こちらの方も過激で面白いです。「まえがき」に、

最初に収録されている「関妃事件と韓国人のアイデンティティ」は、本来、初版の『親日派』に収録するつもりで執筆したものの身の危険を感じたため涙をのんで割愛した原稿であり、『2』にはどうしても掲載したかった。
 
朝鮮近代史ではほぼ常識となっている「閔妃事件」について歴史的事実を述べることは(それが親日であれば)、現代韓国では「身の危険」に繋がることだと言います。著者は、(自著が裁かれる)法廷でテロリストの襲撃を受け負傷したそうです。このテロリストは、1996年に金九を殺した安斗煕を撲殺し、刑期3年のところ恩赦で1年半で出所したという反日の殺人犯。李榮薰は(『反日種族主義』の著者)が、「従軍慰安婦は一種の公娼」と発言したため激しいパッシングに曝され元慰安婦に土下座させられます。著者はガリレオが無理矢理「地動説」を放棄させられた宗教裁判を連想し、李榮薰は「それでも地球は回っている」と言いたかったのではないかと書きます。

韓国の歴史論争は討論ではなく、戦争である。歴史問題にみえるが、実は人間の基本的権利である言論の自由に向かっての闘争なのである。あきれたことに、韓国人はこの国に言論の自由がないという事実さえ知らない。

*****目 次*****
第一部:歪められた英雄たち
 閔妃事件と韓国人のアイデンティティ
 きつね狩り
 東洋のビスマルク
 星を射る
 朝鮮総督府は強盗だったのか
 三一運動の真実
 柳寛順ストーリー
 独立軍の正体、
 穂積産業革命
第二部:大東亜戦争の真実
第三部:戦後韓国のアイデンティティ

 第一部では、日本軍に暗殺された悲劇の王妃・閔妃(乙未事変)、伊藤博文を暗殺した英雄・安重根の実像に迫り、朝鮮の土地の40%を奪ったという朝鮮総督府の「土地調査事業」を検証し、3月1日を祝日にまで仕立て上げた独立運動「三一運動」、満州で日本に抵抗したの朝鮮「独立軍」の真実を明らかにします。「穂積産業革命」では、総督府官僚・穂積真六郎を取り上げ、朝鮮の近代化は日帝よって成し遂げられたとする「植民地近代化論」を論じます。

三一運動

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映画 青いパパイヤの香り(1993仏ベトナム) [日記 (2020)]

青いパパイヤの香り HDニューマスター版 [DVD]  ストーリーがあってない無いという不思議な映画です。いや、ストーリーはあります。1951年、10歳のムイ(リュ・マン・サン)がサイゴン(ホーチミン市)の商家に下働きとして住み込み、ムイと商家の家族の日常が淡々と描かれる第一部。10年後、ムイ(トラン・ヌー・イエン=ケー)は作曲家クェンの家に移り、クェンに見初められて結婚する第二部。それだけの話です。と書けば、田舎の少女の成長物語ですが、ドラマらしいドラマはありません。


ムイ
 ムイの目を通して描かれるこの商家が実にユニーク。家族は、生地商店を営む女主人、一日中琵琶を弾く以外に何もしない無為徒食の主人、ふたりの間には長男と歳の離れた小学生の次男と三男、そして主人の母親がいます。

 生きていればムイと同じ十歳の娘がいたのですが、7年前に亡くなり、その日以来祖母は二階に籠って一歩も外に出ない生活が続いています。主人は、ある日突然家の金を残らず持って蒸発し、ふらりと帰ってくるそうです。夫が帰ると女主人は咎め立てせずまた何時もの日常が始まる、という話をムイに聴かせるのは、この家に長くいるもうひとりの下働き。
 家出の理由は一切明らかにされませんが、この家出常習犯の主人のキャラクターはなかなか魅力的。こうした無為徒食の男が許されるというのも、東南アジアならではのことでしょうか。従って、一家の生計を支えるのは女主人。主人が7年振りに家出しますが、女主人は動ずることもなく一家を支え、義母が病気で倒れ亡くなる事態にもひとりで対処します。甲斐性無しで身勝手な夫と、夫に代わって一家を支える妻の組み合わせは不思議で神話的です。ベトナムの女性は勤勉でしっかり者が多いといいますから、この女主人は典型的なベトナム女性。また女主人は、聡明で働き者のムイに亡くなった娘の面影を重ね彼女を慈しむ優しい女性でもあります。

 もうひとりユニークな人物がムイよりも3,4歳年下の三男。新しく家族の一員となったムイが気になって仕方がない様子で、何かとイタズラを仕掛けます。棒の先にカエルを付けて驚かせたり、わざとバケツをひっくり返したり、装飾品の壺にトカゲを入れたり、イタズラは止まることはありません。一種の愛情表現でしょう。去り際に片足を上げて放屁する辺りは名演技。

 そうしたサイゴンの下町、一家とムイの日常が、主人の弾く琵琶と虫の音、小鳥の囀ずりをBGMにゆったりと描かれます。『愛人/ラマン』はジェーン・マーチが全てであったように、『青いパパイヤの香り』もリュ・マン・サンが全てです。彼女の演じるムイは下働きですから、食事を作り掃除をし、時おり蟻や鈴虫を見てニッと笑うだけ。こんなこともあります。ムイは長男の友人で作曲家のクェンに憧れているようで、食事に来たクェンに、めかし込んで料理を運ぶ姿は実に可愛いです。そんな映画が面白いのか?。1951年のサイゴンのゆったりと流れる時間を許容できるかどうかです。
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10年後
 10年後、長男が嫁を貰ったため、ムイは商家を出てクェンの家に雇われることになります。クェンはパリの音楽大学を出た新進の作曲家。クェンには美人で家柄のいい婚約者がいますが、婚約を破棄してムイを選択します。ムイの初恋が実ったわけです。ドラマといえばこれが最大のドラマですが、クェンの選択の背景は不明。10歳のムイが商家で愛されたようにクェンに愛されたと想像するほかありません。勤勉で聡明な10歳のムイがそのまま成長した姿が彼の心を捕らえたのでしょう。

 ラストで、黄色いアオザイを纏ったムイが詩を朗読します。

春の清水が岩陰から湧き出し 静かに揺らめく
大地の鼓動は 大きなうねりとなり 水を揺り動かすが 水面は静寂そのもの
調和ある水の戯れの きらめく美した
日陰に一本の桜の木 やがて成長して満開の花ざかり
水の旋律に共鳴して 見事に咲き誇る
らとえ水がうねり 逆巻いても 桜の木はりんとしてたたずむ

満開となった桜の木が凛と佇む姿は、ムイ自身の姿でしょう。うねる水は時代のことかも知れません。朗読が終わると、ムイは小さな驚きの声をあげます。どうやらお腹の子供が動いたようです。すでにベトナム戦争が始まっています。その後、ムイはどんな人生を送ったのか...。

監督:トラン・アン・ユン
出演:リュ・マン・サン トラン・ヌー・イエン=ケー

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