SSブログ

映画 お嬢さん(2016韓国) [日記 (2021)]

お嬢さん 通常版 [DVD] 荊の城 上 (創元推理文庫)  英題、The Handmaiden、小間使い。原作はサラ・ウォーターズのサスペンス『荊の城』です。小説の舞台はヴィクトリア朝ですが、映画の舞台は日本統治下の朝鮮。詐欺師と掏摸の娘が上流階級の家の財産を掠め取る話です。プロットに富んだこの小説が、ハリウッドではなく韓国で、しかも時代を日本統治下に設定して製作されるあたりが面白いです(当blogの『荊の城』はここここ)。

 幼児を売買する泥棒一家のスッキ(キム・テリ)は、詐欺師・藤原伯爵(ハ・ジョンウ)によって小間使い・珠子として上月(チョ・ジヌン)の屋敷に送り込まれます。スッキは、上月の姪・秀子=お嬢様(キム・ミニ)の侍女としてお嬢さんと藤原の仲を取り持ち、結婚の後秀子を精神病院に入れて財産を横領しようという計画の共犯者。

 藤原が伯爵だというのは真っ赤な嘘で、済州島生まれの朝鮮人。上月も、密輸品を賄賂に朝鮮総督府に取り入り、日本に帰化して没落貴族の娘と結婚した朝鮮人。朝鮮に豪邸を建て、日本人を集めて稀覯本(実はポルノ)を秀子に朗読させ競売に掛ける怪しい男。しかも売るのは偽物で、それを製作しているのが藤原とふたりは裏で繋がっています。藤原が目を付けたのが、上月の姪の秀子の財産。日本人の秀子は叔父の上月と暮らしていますが、上月もまた秀子の財産目当てで彼女との結婚を目論でいるという色と欲の世界。

お嬢さん.jpg
 財産横領計画の片棒を担ぐスッキは、秀子が藤原を愛するように二人の仲を取り持ちます。ところが、スッキは次第に秀子を愛するようになります。原作の『荊の城』がソッチ系。秀子もソッチ系で二人の仲は急速に接近するわけです。
 スッキの巧みな誘導で秀子は藤原と結婚します。スッキは秀子より金を選んだわけです。秀子が精神を病み、予定通り精神病院へと...、ドンデン返しでエエッ!となります。
 ここまでがスッキの語る第1部。第2部で秀子が第1部の裏側を語って見せ、結末の第3部へと続きます。(サスペンスなのでネタバレ無し)

 面白いのですが、疑問は、設定がなぜ日本統治下の朝鮮なのか?。悪役の藤原と上月はなぜ日本人を騙る「朝鮮人」なのか?、ということです。韓国の反日感情を考えれば、悪役は日本人の方がすっきりするのですが。この映画は、朝鮮と日本の女性が悪役の男を出し抜く一種のジェンダー映画です。敵役の男は、普通の悪人では足らず最も忌むべき存在である必要がある、そこで日本人を「騙る朝鮮男性」が選ばれたわけなのでしょう。何しろ、韓国では日韓併合は絶対悪ですから、悪の手先の同胞ほど「汚い」存在はないのでしょう。そんな男にもっとも相応しい時代として日本統治下が選ばれます。オープニングで日本兵がソウルの街を行軍するシーンがあり、これも観客を日韓併合の時代へと誘う目的でしょう。

 舞台を1930年代に設定することで、確かに原作のヴィクトリア朝のゴシック調の雰囲気が出ました。日本人にとっては、江戸川乱歩、谷崎潤一郎の昭和の世界です?。主な舞台となる日本庭園を持つ和洋折衷の洋館と調度が素晴らしい。こんな建物が韓国にあるのだろうかと検索すると、韓国ではなく六華苑(三重県桑名市)と「名張藤堂家邸跡」(名張市)で撮影されたようです。

 二転三転のどんでん返しがあって面白いですが、放送禁止用語と際どい映像が頻出しますからR18+の映画ですw。『あるメイドの密かな欲望』もそうですが、小間使いは侮れません?。日韓併合時を舞台とした韓国映画では『暗殺(2015)』『密偵(2016)』もオススメ。

監督:パク・チャヌク
出演:キム・ミニ、キム・テリ、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン

タグ:映画
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:映画