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映画 スリー・ビルボード(2017米) [日記 (2021)]

スリー・ビルボード [AmazonDVDコレクション]  原題、Three Billboards Outside Ebbing, Missouri、ミズーリ州エビング郊外の3枚の広告看板。
 3枚の看板とは、「レイプされて死亡」、「犯人逮捕はまだ?」、「なぜ?ウィロビー署長」と記された道端の大きな看板。道を走るとこの看板が順番に現れ、事件の風化を防ぎ事件を解決できない警察を皮肉る仕組みです。この看板を作ったのが、娘をレイプの末焼き殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)。エビングは小さな町で、誰もがミルドレッドに同情はするものの、住民が敬愛する署長のウィロビー(ウディ・ハレルソン)を名指しで非難する彼女の行為は、共同体の結束を乱すものだと看做されます。

 看板を建てたミルドレッドを激しく憎むのがエビング署のディクソン(サム・ロックウェル)。ディクソンは6年かかってやっと警察学校を卒業して地元の警察署に採用された巡査。すぐカッとなって暴力をふるい、犯罪を取り締まるより権力をかさに着て黒人差別に力が入る警官。サム・ロックウェルがアカデミー賞助演男優賞を獲得しているところから想像すると、この短絡的で粗野な警官ディクソンが影の主役ということになります。対峙するミルドレッドは、ギフトショップ(ミズーリ州は観光地が多いので土産物屋?)をやっている普通の中年女性です。DVで離婚し、娘がレイプ殺人の犠牲者であるという不幸を背負っています。

 このディクソンvs.ミルドレッド(基本の構図はこれ)にふたつの事件が起きます。
 ひとつは、看板で皮肉られたウィロビー署長で、末期癌で家族に介護の負担をかけることを厭い自殺します。この自殺の原因は看板だという憶測が流れます。ウィロビーは事件を解決出来なかったことを悔い、看板の維持費5,000ドルをミルドレッドに遺します。署長の自殺原因は看板だと考えたディクソンの怒りは看板を作った広告会社に向かい、従業員を二階から突き落とす暴挙に出ます。もうひとつが、看板放火事件。看板の放火は警察の仕業と考えたミルドレッドは、仕返しのため火焔瓶で警察署を焼き討ち!。折悪しく警察署にいたウィロビーは火傷を負います。
 ディクソンとミルドレッドの行為はいずれも憶測と妄想が生んだ勘違いで、思い込みと誤解でこの世は成り立っている?ことになります。

 ウィロビーは刑事を目指すディクソンに遺書を残しています。

刑事なるのに必要なのは愛だ
愛があれば心が落ち着き考えが浮かぶ
考えれば大事なことに気づく
銃は要らない、もちろん憎しみも
憎しみは邪魔だ
お前はいい奴だ、これから潮目は変わる

 ウィロビーを敬愛するディクソンに、この遺書は効いたようで、潮目が変わります。ディクソンは、バーでレイプ殺人を自慢する男に出会い、男に喧嘩を仕掛け男のDNAを採取、ミルドレッドに連絡。ところが、事件当時男は兵役でアメリカにいなかったことが分かります。ミルドレッド娘を殺した犯人ではないももの、いずれにしろこの男はレイプ魔 →成敗してしまえ。共通の敵を見つけ、ディクソンとミルドレッドは手を結び、ふたりはショットガンを車に積んで男の元に向かいます。男の話がホラで無い保証は無いわけでこれも妄想と憶測。ふたりが男を撃ち殺したどうかは描かれてはいません。東映の任侠映画風に言うなら、高倉健と池辺良が長ドスさげて殴り込みをかけるようなもの(笑。

 裏読みすれば、妄想と憶測で生まれる憎しみは、「共通の敵」を見つけることによって解消される、それはウィロビー説く愛ではないわけです。ウィロビーの遺書で愛を説かなくてならないほど、アメリカ社会には(トランプが煽った)憎しみが満ちているのか?。故に、WhiteTrash?を演じたサム・ロックウェルはアカデミー賞助演男優賞となるのか?。日本人にはわかりません。

 邦題は「スリー・ビルボード」ですが、原題には「ミズーリ州エビング」という注釈が付いていますから、どうもミズーリ州の田舎町という舞台に意味があるようです。ミズーリは「南部」で保守的な州ですが、極端な黒人差別があるわけでもなく、ごく平均的なアメリカの州の様です。共和党の地盤かというとそうでもなく、住民の白人構成比が高い白人優位の州という以外は。タイトルに付く「ミズーリ州エビング」で起こった事件は、何処にでもある話なんだと言っていることになります。

監督:マーティン・マクドナー
出演:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、 ピーター・ディンクレイジ

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映画 謀議(2001米英) [日記 (2021)]

謀議 [DVD]  原題、 Conspiracy=謀議。『ゲーム・オブ・スローンズ』のHOB製作のTV映画です。監督はフランク・ピアソン、出演はシェイクスピア俳優のケネス・ブラマー、コリン・ファース、スタンリー・トゥッチなど。テーマは、「ユダヤ人問題の最終的解決」を決定した1942年のヴァンゼー会議、議長は「金髪の野獣」ラインハルト・ハイドリヒ。登場人物はハイドリヒ以下15人だけ。15人が、ベルリン郊外の豪邸の一室で(舞台もここだけ)、ワインを飲み豪華な食事をしながら。数百万のユダヤ人抹殺を論議します。

 冒頭、会議に至るナチスの現況が説明されます。ナチスは、ユダヤ人問題をロシア(ソ連)に移住させて解決を目論んでいますが、ソ連の反撃に会い戦線は膠着、ユダヤ人問題を第三帝国内で処理する必要に迫られます。すでに大量虐殺はナチスの特別行動隊によってポーランドとソ連で始まっています。森の中で数百人単位で機銃掃射で殺すという方法で、この虐殺方法の難点は、死刑執行者の神経にストレスを与え、親衛隊保安部(SD)やゲシュタポなどゴリゴリのナチス部隊においてさえ、士気の低下を招くことにあったわけです。ヴァンゼー会議では、虐殺する兵士にストレスを与えず「効率的、経済的」に「処理」する方法が論議されます。当然、議長のハイドリヒはこの解決案を持っており、政府、党の高官の了解を得るというものに過ぎません。言わばセレモニーで、ハイドリヒが「ユダヤ人問題の最終的解決」を親衛隊、内務省、司法省、ポーランド総督府に命令を下す場でもあるわけです。
 その解決策は、「絶滅収容所」を作り、ユダヤ人を輸送してガス室で処理するというもの。実際600万人近いユダヤ人が殺されたわけですから、大プロジェクトです。スターリンが行ったとされるウクライナのホロドモールに比べると、はるかに組織的プロジェクトといえます。

 映画です。政府の高官、党(ナチス)の幹部、親衛隊の将官などが続々と屋敷に到着します。挨拶は例のナチス式敬礼「ハイル・ヒトラー!」。”yes sir”までハイル・ヒトラーですから、大の大人が本当にこんなことやってたんでしょうか、やってたんでしょうねぇ。最後に現れるのがハイドリヒ、自ら飛行機を操縦して登場します。ハイドリヒは、バイオリンとフェンシングの名手で飛行機の操縦まで出来たらしい(空軍予備役少佐)。ハイドリヒの「ハイル・ヒトラー」はなおざり、何しろ偉いんですから。
 内務省次官 ヴィルヘルム・シュトゥッカート(コリン・ファース)、ゲシュタポ局長ハインリヒ・ミュラーなど15人が登場しますが、何と言ってもピカイチは親衛隊中佐アドルフ・アイヒマン(スタンリー・トゥッチ)。アイヒマンはゲシュタポの中佐でミューラーの部下だと思うのですが、この会議では事務局の様な役割。後にヨーロッパ各地からユダヤ人をポーランドの収容所へ輸送する責任者となってその有能さを発揮しますが、映画でも有能な事務屋の片鱗を見せてくれます。

 「金髪の野獣」ハイドリヒとはいうと、(『ナチス第三の男』では)甲高い声、傲岸不遜、冷酷というイメージですが、ケネス・ブラマー演じるハイドリヒは、愛想のよさと強圧的な横柄さが同居する得体の知れない不気味な存在。この会議に出席した二人の人物がハイドリヒはユダヤ人だという噂話をします(そうした噂があったらしい)。一人は「本人に直接訊いてみればいいじゃないか」と答えて、そう言われた男は青ざめます。ハイドリヒに睨まれれば命の保証はありません。シュトゥッカート内務省次官、ヨーゼフ・ビューラーポーランド総督府次官などの官僚はこの計画を非人道的なものと認識していますが、保身のため法理論と占領政策へと逃げる始末。法律家のシュトゥッカートは、ニュルンベルク法を持ち出してユダヤ人の定義だなんだとハイドリヒに反論し会議は混乱します。ハイドリヒは、ユダヤ人問題はヒトラーから任された親衛隊の専管事項だ、従わないものは国家の敵だ、敵を始末するのは親衛隊だと「穏やかに」シュトゥッカートを脅しあげます。
 豪華な食事と上等なワインの饗宴、ユダヤ人抹殺がプロジェクトとして決定する落差がこの映画の真骨頂であり、親衛隊の持つ暴力と、暴力を背景とした怪物ハイドリヒを演じるケネス・ブラマーの演技が見どころで、オススメ。

監督:フランク・ピアソン
出演:ケネス・ブラマー、コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ

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シンビジュム取り込み [日記 (2021)]

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 最低気温が15度を下回ってきたので、シンビジウムを室内に取り込みました。だいぶ根が回ってきたので、来春は株分け、植え替えです。

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映画 運び屋(2018米) [日記 (2021)]

運び屋 [DVD]  クリント・イーストウッドは、90歳近くになっても映画を創り主演するのですから、その情熱は敬服に値します。
 原題は”The Mule”=ラバ。一言で言えば、90歳の老人が喪われた家族の絆を取り戻そうと足掻く話です。老画商が最後の賭けに出る『ラストディール』、ロバート・レッドフォードが老ギャングを演じる『さらば愛しきアウトロー』、88歳の仕立て屋がアイデンティーを確認する『家に帰ろう』と、選んでいるわけではないのですが、最近爺さんの映画ばかり観ています。ベビーブーマーが後期高齢者となったマーケットへの対応でしょうか。

 アール(クリント・イーストウッド)はデイリリー(忘れ草、キスゲ)を育てる近在で名の売れた園芸家。いろんな催しに花を持参する社交家で、評判はいたって良さそう。外顔はいいのですが、私生活は妻子と疎遠で、娘とは20年?も会っていない孤独な老人。『ラストディール』の主人公も絵の商売にかまけて娘や孫に見捨てられた老人でしたから、設定はほぼ同じ。

 アールの農場はnet通販に押されて潰れ破産します。90歳になって無一文ですからこれはツライ。アールの無事故無違反の運転技術に目を付けた男が、割りのいいアルバイトの話を持って来ます。物を指定された場所まで運び、車のキーをグローブbox入れて小1時間かそこら消える、一時間後にはグローブboxに結構なアルバイト代が入っているという仕組みです。つまり「運び屋」。アールに荷物を渡すのはライフルを持ったメキシコ人ですから、犯罪の片棒を担がされているの明らか。無一文で背に腹は代えられないアールは報酬に釣られてTransporterを繰り返します。懐が豊かになったアールは孫娘の結婚費用を出してやり、潰れかけた退役軍人会に多額の寄付をしたり、益々深みに。

 アールは運んでいるのがコカインだと知っていますから確信犯。『さらば愛しきアウトロー』のユーモアも、『ラストディール』のオークションで一発当てるという気概もありません。仲間内でいい顔をしたい、孫にはいい爺ちゃんでいたいというだけの様な気がします。
 ノーテンキなアールに麻薬捜査官の手が延び、麻薬シンジケートの魔手が忍び寄りアール爺さんの運命や如何に、家族との絆は修復されるのか…となります。

 齢90歳に近いクリント・イーストウッドが監督主演するわけですから、共演もブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーンを並べます。ハリウッドはそれなりに敬意を払ったと思いますが、『トランスフォーマー』の方が面白いと言わざるを得ません。<爺さん映画>としては、『ラストディール』『さらば愛しきアウトロー』『家に帰ろう』の方が上です。クリント・イーストウッドの映画では『ミリオンダラー・ベイビー』辺りがピークかも知れません。

監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン

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日曜大工 ドアクローザー [日記 (2021)]

リョービ 取替え用 ドアクローザー S-202P シルバー IMG_20211019_133129.jpg
 玄関のドアのカギが壊れ、内からは開くが外からは開けないという情けないことになりました。築30ン年ともなると色々不具合が…。業者を呼ぶと、型が古いので代替品が無いそうで、似たようなものを取り付けると6~7万、ドアごと交換すると20万以上! →で自力で脱出しました。ロックは生きているのでメカ部分を取り払って外観だけ残し、ドアクローザーを取り付けました。これで風でガタつくこともない。
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こんな外観               メカ部分撤去
 ドアクローザーは元々付いていたのですが、壊れて取り外しいます。検討の末「リョービ 取替え用 ドアクローザー S-202P」に決定。この製品の優れているところは、アジャスターが付いていて、元の穴を利用できること。つまり、ドライバー1本で取替可能というなかなかのスグレモノ。業者に頼むと3万ほどかかると言われたのですが、5,000円ほどで済みました。
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本体用アジャスター           アーム用アジャスター

タグ:絵日記
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Dynabook R731の液晶修理 [日記 (2021)]

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不具合                 6本のネジを外す
 ノートPCを開く度に液晶に不具合発生。2~3度画面の角度を変えると元に戻りますが、だんだん酷くなって来たので修理しました。大昔、ThinkPadで同様の症状が出て、マザーボードと液晶をつなぐフレキシブル・ケーブルの接触不良で治したことがあります。
 Google先生に聞くと、液晶は簡単に交換できそうなので分解。矢印の液晶4箇所とヒンジ2箇所のネジを外し、外枠を外します。外枠はカシメてあるだけなので、マイナスドライバで徐々に広げていけば簡単に外せます。
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フレームが外れる            液晶はネジ止めされず乗っているだけ
 液晶はフレームに乗っているだけ。下部にケーブルがあり(下の画像)、これを固定するテープが劣化してケーブルが浮いているため開く度に接触を不良を起こしているようです。ケーブルをテープで止め直して修理完了 →治りました!。
 古い機種でWindows11に未対応ですが、SSDに換装して動作が軽くなり、持ち運びに便利なので重宝しています。Windows10のサポートが切れる2025年までは頑張ってもらいます。
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このケーブル              治った!

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今年も柿が豊作 [日記 (2021)]

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 今年も大豊作です。干し柿にしようと沢山採りましたが、誰が剝くんだ?。未だ残っていますから何時もより木守柿がたくさん残せそうです。
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剝きました               焼酎で渋抜き
柿のヘタの部分を25度の焼酎に浸し、スーパーの袋に密封すれば4~5日で渋が抜けます。先程食べてみましたが大丈夫!。余った焼酎はお湯割りです(笑。

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シンシアリー 恥韓論(2014扶桑社新書) [日記 (2021)]

韓国人による恥韓論 韓国人による恥韓論シリーズ (扶桑社BOOKS新書)
 書名からしてもう嫌韓本、著者のシンシアリーという名前からして怪しそう(笑。著者は辛口韓国批評のシンシアリーのブログ(日本語)を主催する韓国人Bloggerで、『恥韓論』はそのblogが本となったものだそうです(このblogは面白いです)。近年『反日種族主義』、『親日派のための弁明』など韓国人による韓国批判が相次いで出版されています。本書もそうした一冊。

反日の起源
 韓国人はなぜ日本をこれほど嫌うのか?という疑問です。日本は「日韓併合」で朝鮮の近代化に手を貸していますから、感謝こそされ非難される謂われはないわけですが、「反日」は止むことはありません。
 第一章『「反日」の起源』では「憲法前文」を取り上げます。前文が韓国のルーツは3・1運動と臨時政府だと謳っていることを版日の根拠のひとつとしています。反日は朝鮮通信使の時代からありますから、伝統的「反日」があって憲法前文が生まれたのでしょう。朝鮮通信使は両班階級ですから、彼らの事大主義と小中華思想がその大もとでしょう。小中華思想では、国の優劣を中華からの距離で測りますから、中華から遠く離れた日本は「夷狄」ということになります。朝鮮より劣った日本が、好太王、百済・新羅の時代から半島に攻め入り、壬辰倭乱で侵略し、あまつさえ日韓併合までやったわけですから、「千年の恨みは忘れない(朴槿恵)」となるのでしょう。
 儒教に由来する事大主義、小中華思想は両班階級のものですから庶民は無関係、倭寇の時代には日朝仲良く?半島、東シナ海沿岸を荒らし回っていた歴史もあるわけです。現在の韓国は両班ばかりになったのでしょう。

 日韓問題にはいろいろありますが、慰安婦、いわゆる徴用工、竹島の3つが主なものです。これらは、『反日種族主義』、『親日派のための弁明』によってその虚構が論破され、慰安婦は性契約による娼婦だということがハーバードのラムザイヤー教授によって証明されています。理性的に考えればこれらを反日カードに使うことは最早出来ない筈なのですが、相変わらず反日の拠り所となっています。

家計負債と慰安婦問題
 著者も第三章「韓国がひた隠す自国の性奴隷」で慰安婦問題を取り扱っています。国内外に慰安婦問題を抱える韓国が70年前の日本の慰安婦を避難する資格はないという話です。これを韓国の「家計負債」と絡めたところが本書の特徴です。

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映画 愛の嵐(1974伊) [日記 (2021)]

愛の嵐 [DVD]  英題:、The Night Porter。
 どうしても観たいと思いながら機会がなかった映画があります、『愛人/ラマン』と『愛の嵐』。『愛の嵐』は例の扇情的なポスターに惹かれたわけです(笑。シャーロット・ランプリングのセミヌードとナチス親衛隊の軍帽という組み合わせが圧巻です。やっと観ることができました(AmazonPrime)。基本は、ナチス親衛隊の将校とユダヤ女性のラブストーリーで、ホロコーストの加害者と被害者の愛です。

 舞台は1957年のウィーン。ホテルのナイトマネージャーを勤めるマクシミリアン=マックス(ダーク・ボガード)の前に、アメリカ人の指揮者夫妻が現れます。カウンターを挟んで、マックスと夫人のルチア(シャーロット・ランプリング)は、幽霊にでも出会ったかの様に見つめ合います。フラッシュバックによってふたりの過去が明かされます。マックスはナチス親衛隊将校、ルチアはユダヤ人収容所の収容者。マックスは親衛隊将校の地位を利用してルチアを愛人にした過去があり、ふたりは12年を経て再会したわけです。再会の後ろにはナチスのユダヤ人迫害という暗い過去が横たわっています、これが主旋律。
 第三帝国が崩壊し、マックスは過去を隠し一市民として暮らしています。彼が恐れるのは悪行を知るユダヤ人で、親衛隊だったことがバレれば告発され刑務所行きです(日本兵もB/C級戦犯として5700名が捕まり1000名が処刑された)。オーストリアはナチスの侵攻を歓迎し、国民の10%がナチス党員となった国です。一人が捕まれば芋ずる式に摘発されるため、元対独協力者は互いに監視し、ホロコーストの証人の抹殺や党員の逃亡を支援する組織=「査問会」を作っています(映画にもなった「オデッサ」が有名)。マックスの過去を知るルチアの登場で、この査問会が動き出します、これが副旋律。査問会のリーダーは、今でも党員であったことを誇りに思うゴリゴリのナチズム信奉者。

 査問会はふたりの関係を調査し、マックスは査問会からルチアを護るたルチアを知る人物を殺害します。こうしたサスペンスの間に、ユダヤ人収容所でのマックスとルチアの”愛”がフラッシュバックされます。親衛隊の秘密パーティーで、ルチアが軍帽にサスペンダーのセミヌードで歌い踊るあの有名なシーンです。親衛隊は、ユダヤ人女性とこうした怪しげなパーティーを楽しんでいたようです。
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パーティー               サロメ
 マックスは、これもナチズムの信奉者・伯爵夫人にルチアと再会したこと、今でもルチアを愛していることを告白します。「ずいぶんロマンチックな話ネ」と言う夫人に、「そんな話ではないんだ聖書の話なんだ」とマックスはパーティーの思い出を語ります。そのパーティーで、マックスはルチアが嫌っていた男の生首を彼女に捧げるのです。これはオスカー・ワイルドの「サロメ」です。戯曲では、サロメは「7つのヴェールの踊り」(ストリップティーズ)を踊り、愛を求めるヘデロ王に首を要求します。ルチアは首を要求したわけではありませんから、マックスは彼女の歓心を買うため首を捧げたわけで、親衛隊将校とユダヤ女性という支配する者と支配される者の関係がここで入れ替わり、ナチスの物語がラブストーリーに転換したことになります。

 支配する者と支配される者の転換は、マックスに起こったばかりではなくルチアにも起こっていたようです。再会したルチアは、ふたりが出会った頃のドレスを買いマックスのアパートを訪れ12年前の関係が復活します。ルチアもまたマックスを愛していたことになります。

 マックスはルチアを護るためにホテルを辞めアパートに閉じこもります。査問会はアパートを監視しマックスの殺害を試み、食料品の配達やアパートの電気まで止めて誘い出そうとします。飢えに苛まれながらの愛欲生活も長くは続かず、マックスは親衛隊将校の制服に身を包み、ルチアは収容所でマックスに着せられたドレスを着てふたりは外出します。ドナウ川にかかる橋の上で、ふたりは査問会の銃撃に倒れて幕。
 『愛の嵐』とは何か?。解釈はいろいろありそうですが、ラストでふたりが12年前の服をまとったことがカギです。マックスは、外に出れば殺されることが分かっていたはず、殺されるのであれば12年の前の出会った頃の姿で最期を迎えたい、それが愛を証明することだと考えたのでしょう。親衛隊とユダヤ女性、支配する、支配される関係にも愛はあるのだと。
 『愛人/ラマン』も宗主国の少女と植民地の青年の、支配階級と被支配階級のラブストーリーでした。主人と婢の倒錯の愛とエロティシズムは永遠のテーマかも知れません。
ルチア4.jpg ←こんなシーンは無かった
 今回観た『愛の嵐』はどうも完全版ではなさそうで、カットされた映像があるようです。その映像は「ナチズムとエロス」だと思うのですが…ノーカット版を探して見ます。シャーロット・ランプリングとナチス大好きという方以外には余りオススメできません。個人的には宿題を果たした気分ですが。

監督:リリアーナ・カヴァーニ
出演:ダーク・ボガード、シャーロット・ランプリング

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映画 オブリビオン (2013米) [日記 (2021)]

オブリビオン [DVD]  原題Oblivion=忘却、SFらしからぬタイトルです。冒頭、21世紀初頭と思われるNYの雑踏で、トム・クルーズとオルガ・キュリレンコの出会うシーンがありますから、この二人が主人公らしい。
トム・クルーズのナレーションで、背景が語られます。「2077年、記憶を消されて5年、同じ夢をみる」と言ってますから、NYの雑踏とオルガの夢が「忘却」した記憶ということになります。

 『オブリビオン』の背景とは、半世紀前に異星人”スカヴ”の侵略を受け月は消滅、それが原因で地震と津波が起こり、核で迎撃したため人類は滅亡し、生き残った人類は宇宙ステーション”テット”に避難します。彼らは、地球を捨てて土星の月タイタンへの移住を計画し、人類をタイタンに運ぶ宇宙船のエネルギーを得るため海水から核エネルギーを作るプラントを建設します。

 このプラントを生き残りの異星人から護るのが宇宙ステーションから派遣されたジャック( トム・クルーズ)とヴィクトリア、通称ヴィカ(アンドレア・ライズボロー)の男女のペア。Tech49に住み、ジャックがプラントを巡回しプラントの監視ドローンのメンテをし、ヴィカが宇宙基地テットとジャックを繋ぐ通信担当という役どころで、「最高のチーム」と自称するジャックとヴィガは事実上の夫婦。雲の上に突き出たTech49、ジャックが駆る偵察機(バブルシップというそうです)がシュール。この最先端の環境の中でジャックが憧れるのは滅びた地球文明。廃墟のスタジアムで2017年のライスボウルに思いを馳せ、汚染されていない地域に小屋を建て、アナログレコードや古い小説を並べ隠れ家としています。30代?のジャックが、半世紀前に滅んだ文明にノスタルジーを抱くのは少々?、ローマ文明に憧れる現代人がいるにしてもです。これも伏線。

 ジャックが宇宙船の救命艇を発見します。乗っていたのはジュリア(オルガ・キュリレンコ)でいよいよ本命登場となります。救助の時”スカヴ”の残党と戦闘になり、異星人も登場します。これがアナログなエイリアン、ヘルメットに羽飾り付けている!。
 ジャックはジュリアをTech49連れ帰りますが、ジャックとヴィカのペアにジュリアが加わったことで「最高のチーム」にヒビが入ります。つまり三角関係。ジュリアとはいったい何者なのか、アナログ・エイリアンとは?...。

 バブルシップと戦闘型ドローンの空中戦あり(スターウォーズのパクリ?)、エイリアンも登場し、三角関係もあり、おまけにクローンまで登場するという、二重三重の迷彩が施された脚本は良くできています。netのレビューはイマイチですが、個人的には面白いと思います。トム・クルーズ、オルガ・キュリレンコはそれなりですが、ヴィカのアンドレア・ライズボローの演技はなかなかです。
監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:トム・クルーズ、オルガ・キュリレンコ、アンドレア・ライズボロー、モーガン・フリーマン

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