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読書感想文 馳星周『少年と犬』 [日記 (2021)]

【第163回 直木賞受賞作】少年と犬 (文春e-book) 1.jpg

 毎年この頃には、夏休み宿題支援の「読書感想文」を書いています。中高生の頃に読書の習慣を付けると、生涯にわたって人生を豊かなものにしてくれるはずです。今回取りあげるのは馳星周『少年と犬』、2020年、163回直木賞受賞作です。犬と人間というテーマがはっきりしているので、感想文に書きやすいと思います。連作の主人公の犬がなぜ南を目指すのかというミステリー風で読みやすいです。本書のメイン『少年と犬』を中心とした感想文でこっちの続編です。

***ここから読書感想文***

 東日本大震災で飼い主を失ったシェパードの雑種犬「多聞」が、かつて結んだ少年との絆を頼りに、岩手県・釜石から南を目指す物語です。多聞とは、持国天、増長天、広目天と共に仏を護る四天王のひとり毘沙門天=多聞天です。仏を護るように人を護るという願いが込められたネーミングです。
 多聞が旅の途上で織り成す人との出会いを、『男と犬』『泥棒と犬』『夫婦と犬』『娼婦と犬』『老人と犬』『少年と犬』の6編の短編にまとめた連作集です。連作の主人公は「多聞」ですが、本当の主人公はやはり人です。

 タイトルの『少年と犬』は6話の短編集の最後に収録されています。釜石の漁師・内村は東日本大震災に会い、息子が震災のトラウマで口を効かなくなったため、つてを頼って熊本に移住しています。その内村の車の前に犬が現れます。犬の身体に埋め込まれたマイクロチップから、犬の名は多聞であり釜石で飼われていたこと、飼主は震災で亡くなったことが判明します。震災から5年が経ち、犬は何のためにどうやって釜石から熊本までやって来たのか?。
 内村はこの同郷という縁に惹かれ多聞を飼うことに決めます。獣医から引き取って家に連れ帰ると、震災のトラウマで「一言も口をきかず、笑わない。泣かない。怒らない」息子の光が多聞に激しく反応します。片時も犬を離さず一緒に寝る生活を送るうちに、光の顔に笑みが戻り、言葉を発するようになります。犬が閉ざされた光の扉を開いたのです。

 やがて光と多聞の関係が明らかになります。光と多聞は5年前に釜石で出会っていたのです。たまたま散歩で通りかかった子犬の多聞は、公園で遊ぶ3歳の光に駆け寄ったと言います。これを見ていた老人は、

なんて言うかなあ、あれはまるで、離ればなれだった恋人同士が、久しぶりに再会したって感じだった。ああいうこともあるんだなあって、後で話したもんだよ

翌日から、公園で遊ぶ光と多聞の姿が毎日のように見かけられたというのです。
 2011年3月11日、東日本大震災が起こり、多聞の飼い主は亡くなり、光は熊本に移住して一人と一匹の関係は絶たれます。飼い主と光を失った多聞は光を探す旅に出、5年の歳月をかけ、釜石から光の住む熊本へたどり着いたのです。
 2016年4月14、熊本を震度7の地震が襲い、多聞は崩れ落ちる壁から光を護り命を落とします。
 犬は2~4万年前に家畜となったそうです。言い換えれば人間と犬は数万年にわたって友情を育んできたわけです。光と多聞は、遠い昔に何処かで出会い強い絆を結び、一人と一匹は「転生」を繰り返して2011年に再会した、もちろん『少年と犬』はフィクションですが、ついそんな想像をしたくなります。

 父親は光に多聞の死を伝えます、

「多聞、いるんだ。ここに」光は自分の胸を指差した。
「あのね、あの時、ぼく、多聞の声が聞こえたんだ。だいじょうぶだよ、光、ぼくはずっと光と
一緒にいるからね、だから、なんにも心配することないんだよって」
「死んだからって多聞がいなくなったわけじゃないんだよ、お父さん」
光は、また何時か何処かで多聞と再会できること知っている、人と犬の数万年に及ぶ絆を語っていることになります。

 6編の連作短編集『少年と犬』は、実はここに至る物語です。釜石を出た多聞は、仙台(男と犬)、新潟(泥棒と犬)、富山(夫婦と犬)、滋賀(娼婦と犬)、島根(老人と犬)と、人との出会いを重ね日本列島を南下します。

 『男と犬』は、大震災で生活基盤を失い窃盗団の片棒をかつぐ男と「迷い犬」が出会います。犬は鼻先を絶えず南の方角に向けるため、男は「南には誰がいる?」と多聞に問いかけます。本書は、この「問い」が全6話を引っ張るミステリーでもあります。第1話で、多聞はの避難生活で認知症を患った男の母親のセラピー犬となり、男は、大震災で失った家族の幸せを取り戻します。多聞は行く先々で人に「癒し」をもたらします。第5話、島根で出会った末期癌で余命幾ばくもない老人は呟きます、

(犬は)人という愚かな種のために、神様だか仏様だかが遣わしてくれた生き物なのだ。
人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない。(老人と犬)

 そして第6話『少年と犬』で、「南には誰がいる?」という第1話の問いの答えが明かされるわけです。第1話~第5話は人の物語でしたが、第6話は犬の物語、多聞の物語となります。

 帰巣本能に導かれて犬が何百キロも旅をする事例は、実際にあるそうです。岩手で結んだ絆を頼りに、少年に会うため日本列島縦断の旅をする犬の物語は荒唐無稽ですが、犬と人間は数万年来の友達ですから、こんな話もあったのかも知れません。

これで1910文字、原稿用紙約5枚です。

読書感想文の書き方
『蟹工船』を材料とした書き方実践編
小林多喜二 『蟹工船』・・・青空文庫利用
芥川龍之介 『藪の中』・・・映画併用、青空文庫利用 
山際淳司  『スローカーブを、もう一球』 [手(チョキ)]
須川邦彦  『無人島に生きる十六人』 ・・・青空文庫利用
坂口安吾  『ラムネ氏のこと』 ・・・青空文庫利用
藤沢周平  『蝉しぐれ・・・原稿用紙約3枚
吉村昭   『漂流』 ・・・原稿用紙約3枚
笹本稜平  『春を背負って』 ・・・原稿用紙約3枚
遠藤周作  『沈黙』 ・・・原稿用紙約3枚 
百田尚樹  『海賊とよばれた男
夏目漱石  『こころ』・・・定番!
西村 淳  『面白南極料理人』・・・映画もあり
佐藤 剛  『上を向いて歩こう』・・・お馴染みの歌の話
門井慶喜  『銀河鉄道の父』・・・宮沢賢治です
馳星周   『少年と犬』[ひらめき]・・・このページ

スマホを使って読書感想文 の書き方 [ひらめき]

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馳星周 少年と犬(2020文藝春秋) [日記 (2021)]

【第163回 直木賞受賞作】少年と犬 (文春e-book)  2020年、163回直木賞受賞作。東日本大震災で飼い主を失ったシェパードの雑種「多聞」が、かつて結んだ絆を頼りに岩手県釜石から南を目指す物語です。多聞が旅の途上で織り成す人との出会いを、『男と犬』『泥棒と犬』『夫婦と犬』『娼婦と犬』『老人と犬』『少年と犬』の6編の短編にまとめた連作集です。連作の主人公は「多聞」ですが、本当の主人公はやはり人。

 第1話『男と犬』では、大震災で生活基盤を失い窃盗団の片棒をかつぐ男と「迷い犬」が出会います。第1話で、犬の名前が多聞であること、犬は鼻先を絶えず南の方角に向けるため、男は「南には誰がいる?」と多聞に問いかけます。本書は、この問いが全6話を引っ張るミステリー風でもあります。
 第1話で、多聞はの避難生活で認知症を患った母親のセラピー犬となり、男は、大震災で失った家族の幸せを取り戻します。多聞は、仙台から新潟(泥棒と犬)、富山(夫婦と犬)、滋賀(娼婦と犬)、島根(老人と犬)と南を目指し、行く先々で人に癒しをもたらします。末期癌で余命幾ばくもない老人は呟きます、

(犬は)人という愚かな種のために、神様だか仏様だかが遣わしてくれた生き物なのだ。
人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない。(老人と犬)

 第6話『少年と犬』で、「南には誰がいる?」という第1話の問いの答えが明かされます。多聞は少年会うために岩手からはるばる熊本まで旅をしてきたのです。第1話~第5話は人の物語でしたが、第6話は犬の物語、多聞の物語となります。帰巣本能に導かれて、犬が何百キロも旅をする話は実際にあるそうです。岩手で結んだ絆を頼りに、少年に会うため日本列島縦断の旅をする犬の物語は荒唐無稽ですが、犬と人間は数万年来の友達ですから、数万年の間にはこんな話もあったかも知れません。

 作者も犬のために軽井沢に引っ越した愛犬家、この短編集を直木賞に推したのもきっと愛犬家、読んでいるあなたも愛犬家?w。
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 我が家の駄犬”ターボ”。「多聞」に比べると、名前からして駄犬ッポイ w。
 面白かったので、夏休みの宿題「読書感想文」にまとめてみました

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絵日記 秋ナス [日記 (2021)]

秋ナス2.jpg 秋ナス.jpg

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Wikipedia、ジミー・ウェールズさんからメール [日記 (2021)]

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 ウィキペディアが20周年らしいです。ジミー・ウェールズさんから「寄付お願い!」のメールが来て、ウィキペディアにアクセスすると「寄付お願い!」の表示が出ます。寄付などめったにしないのですが、wikiだけは別で毎回ミニマムの300円だけ寄付しています(次回からは500円か1000円にしよう)。

 ウィキペディアはnet検索できる百科事典として便利で、?があればwikiです。信頼性はどうなんだろうとは思うのですが、出典が明示されており、フリーですから間違った内容には世界中?から訂正が入り、つまり淘汰され、フェイクの多いnet世界ではマァ信頼して良いかと思っています。日本語版に無い場合は英語版にあるし…。

ポケットモンスターとポルノ女優の記事は豊富だが、女性作家やサブサハラアフリカ地域の記事は貧相
スウェーデン語版ウィキペディアにはロード・オブ・ザ・リングに登場するキャラクターなどの記事が150以上ある一方で、ベトナム戦争に関する人物記事は10にも満たない(wikipedia)

らしいですが、需要と供給の問題でしょうかw。

 山川の『朝鮮史』を読みながら、?の箇所はwikipediaで確認しました。韓国の歴史に付いては所謂「歴史問題」があるのでけっこう厄介です。例えば韓国にある「前方後円墳」。前方後円墳は日本独自の墳墓形式であり、日本史ではヤマト王権が地方へ権力を伸長する目安と考えられています。従って朝鮮半島南部にこれが存在するということは、その地まで日本の権力が及んでいたとも考えられるわけです。韓国にとってこれは由々しき問題。前方後円墳の存在自体は動かせない事実ですから(前方と後円の間を削った実績あり)、被葬者が誰であるかによって、古墳の意味が異なって来ます。wikipediaでは、

 ・在地首長説(つまり朝鮮人): 栄山江流域首長が百済・倭と一定の交流を取りながら自立を維持するため、百済に対するアピール(牽制)として倭の形式を採用した
 ・倭系百済官人説(朝鮮勢力を背景とした倭人): 大加耶征服を見据えた百済が栄山江勢力の牽制のため派遣した、倭人(北部九州・有明海出身者)の墓とする説
 ・倭人説:日本列島から移住した倭人の墓とする説

と諸説が、出典とともに記載されます。あとは検索者が判断してよ、というわけです。日本由来の前方後円墳が12基も朝鮮にあるわけですから、ヤマト王権の力が何らかのかたちで及んでいたことは否定しようがありません →不都合な真実?。

 同様に、倭国が朝鮮半島南部を支配するために設置した出先機関とされる「任那日本府」についても、第二次大戦前~現在までの研究史・論争史が紹介され

   ・加羅諸国の在地豪族の合議体であるという説、百済が加羅諸国を支配するために置いた機関とする説
・加羅諸国が対倭外交のために設置した機関とする説
・ヤマト王権の代表と加羅諸国の首長層の合議体であるとする説
 『朝鮮史』の特に近代の記述は「民族史観」寄りで、wikipediaの方がはるかに公正のような気がします。
 妄想なんですが、wikipediaを(に限りませんが)乗っとれば世論操作ができそうです。ex.アポロ11号以下は月に行かなかったと書けばどうなるんでしょう。ちなみに中国からwikipediaは見れないそうですw。というわけで、ジミー・ウェールズさんから「寄付お願い!」のメールが来れば、また寄付しようと思いますw。

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スマホを使って  読書感想文(2) 「源氏物語」 [日記 (2021)]

Genji_Kaisetsu_03.jpg げんじものがたり 
 スマホを使う読書感想文第2弾ですw。『源氏物語』を読んで読書感想文を書く、という話ではありません。源氏の冒頭『桐壺』の現代語訳を「方言で書く」という「読書感想文」です。これを思いついたのは、いしい・しんじ著『げんじものがたり』です。いしいサンは、源氏物語を「京都弁」で訳し一書をものにしました。源氏を大阪弁や熊本弁、山形弁で書き記してもいいはずです。できる? →桐壺の原文も現代語訳もnetにありますから心配はありません、スマホで検索してコピペするだけです。これだと「コピペだ!」と言われそうですから、「方言」で訳するところに「創作」があります。山形弁の源氏は「オレ(ワタシ)の創作だ!」というわけです。これだと、源氏を全部を読む必要はありませんw。

タイトル:源氏物語の大阪弁訳
原文
いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。
はじめより我はと思ひ上がり給へる御方方、めざましきものに、おとしめそねみ給ふ。
同じほど、それより下臈の更衣たちは、まして安からず。
朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積もりにやありけむ、いとあつしくなりゆき、もの心細げに 里がちなるを、いよいよ飽かずあはれなるものに思ほして、人のそしりをもえ憚らせ給はず、世の例(ためし)にもなりぬべき御もてなしなり。
上達部(かんだちめ)、上人(うへびと)などもあいなく目をそばめつつ、いとまばゆき人の御覚えなり。唐土(もろこし)にも、かかることの起こりにこそ、世も乱れ悪(あ)しかりけれと、やうやう、天(あめ)の下にもあぢきなう、人のもて悩みぐさになりて、楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに、いとはしたなきこと多かれど、かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて、交じらひ給ふ。
父の大納言は亡くなりて、母北の方なむ古の人の由あるにて、親うち具し、さしあたりて世の覚え華やかなる御方々にもいたう劣らず、何ごとの儀式をももてなし給ひけれど、取り立ててはかばかしき後ろ見しなければ、事ある時は、なほ拠り所なく心細げなり。
前の世にも御契りや深かりけむ、世になく清らなる玉の男御子さへ生まれ給ひぬ。
いつしかと心もとながらせ給ひて、急ぎ参らせて御覧ずるに、めづらかなる児(ちご)の御容貌(かたち)なり。

大阪弁訳
 いつの天皇さんの時代のことやったかなぁ。御所には後宮という大奥みたな所があって、女御、更衣とかいう女性がイッパイいてる。そんなかで、そんなに身分の高い貴族の出身ではないんやけど、天皇さんにごっつう可愛がれた人(桐壷サン)がいてはった。
天皇さんに気に入られるためには競争が激しい。私こそが一番やという思い上がった女や親兄弟が勢力を持った女からは軽蔑され、出自がどっこいどっこいかそれ以下の女性からは、何でアイツなんや!と妬まれていた。
朝晩の宮中勤務でもイジワルされるし、まぁイジメやな。登校拒否みたいになって実家に帰ってしもうた。この朝夕の「おつとめ」というのは、たぶん、天皇さんが夕方に桐壷サンを自分の部屋に呼び込び入れ、朝に桐壺サンが天皇の部屋から出ることだと思うんやが、そういうことや。で天皇さんは、可哀想や思い、人がどう言おうがますます桐壷サンを大事にしはるわけ。
御所の大臣や役人は、中国でも皇帝がひとりの女性ばかり可愛がると国が乱れるんとちゃうかと心配するんやけど、天皇さんは知らんぷり。桐壺ハンは楊貴妃や!。
 そんなこんなで、桐壺サンはめちゃカワイイ男の子を産みます。正妻の息子サンの方は実家の身分が高いんで、世間では行く末皇太子やと噂されるんやが、天皇さんは桐壺サンの子供の方がカワイイので、こっちの方ばっか可愛がる。

 というのが光源氏の誕生です。身分の低い女性から生まれた天皇の子供が、結局天皇にはなれず、そのイケメンを生かしてプレーボーイとして生きる、それが『源氏物語』らしいです。

 こんなの「読書感想文」になるんですかねぇw。原文+大阪弁訳で文字数は1269、原稿用紙約3枚!。原文と与謝野晶子現代語訳を読みながら大阪弁に訳するのは、けっこう楽しいです(いしいサンも楽しかった筈)。古語辞典をひけば古文の学習になります。
 この方法を使えば、芭蕉『奥の細道』、『万葉集』など何でも感想文になります。西鶴なんか面白そう…。

タグ:読書
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PC版 Evernoteのアップデート [日記 (2021)]

evernote3.jpg evernotr.jpg
ホーム画面               アップデート版  
 Evernoteがアップデートされました。複数の端末で同期してくれるEvernoteは、PCとスマホで常用アプリです。アップデートは、慣れの問題もありますが大抵使い勝手がいまひとつの場合が多い(windows8みたいな?)。大きく変わったのは、「見てくれ」とキーボードショートカットが使えること。ホーム画面ができています→ウェジット、直近のノート、直近保存した画像や文書が表示されますが、サイドバーを表示させておけば済む話です。手書きにも対応したそうですが、手書きは使わない。キーボードショートカットが増えています、スクリーンショットはAlt + Ctrl + SですがWin + PrintScreenと何処が違うのか →試してみるとwindowsアクセサリのSnippingToolを起動してEvernoteに取り込み機能です。いろいろ実装したためか、起動が遅くなりました。
 アップデート版が安定するまで、以前のバージョンの Evernote、Evernote Legacyが使えるようです。

 「同期」ボタンが消えて、右下に「すべての変更が保存されました」という表示に変わりました。保存と同期はスピードアップされているようでこれは歓迎。これでPCの古い文書でスマホの新しい文書を上書きするミスが減りそうです(何度か泣いています)w。

 検索で必要なメモにたどり着けるのでタグは使っていなかったのですが、使ってみることにしました。タグを何に振り分けるか、なかなか悩みます。androidの方は安定するまでアップデートは当面を見合わせます。

タグ:パソコン
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キーボードの修理(水洗い) [日記 (2021)]

keyboard.jpg
 キーボードにアイスコーヒーをぶち撒けました。水洗いすればナントカなる →ナントモならなかったので分解しました、ネジが16個!。簡単な構造で、電極をプリントした2枚のフィルムをKeyトップで接触させるだけ。keyの戻り(バネ)はラバーです。2枚のフィルムの間の水分が完全に乾いていなかったのが原因で、水分を拭き取って組み立て。これで無事治りました →メデタシ。裏のネジを強く締めると「@@@@@@@@@@」みたいになります、ホドホドに。

タグ:パソコン
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ドナテッラ・ディ・ピエトラントニオ 戻ってきた娘(2021小学館) [日記 (2021)]

戻ってきた娘
 新聞の書評で知り読んでみました。イアタリでベストセラーとなり文学賞を受賞、28ヵ国で翻訳出版されているようです。

戻ってきた娘
 ある日突然、両親は実の両親ではなく自分は養子であることを知らされ、アンタは明日から実の両親の元で暮しなさい、と実家に戻された13歳の少女「わたし」の物語です。

 「養家」は、警察官の父親と教会で教理問答を教える母親という中流家庭。一人娘ですからスイミング教室に通いバレーを習うという恵まれた生活。一方「実家」はというと、煉瓦職人の両親の下に5人の子供がアパートの狭い部屋にひしめく貧しい家庭。13歳まで一人っ子だった「わたし」は、17歳の長男を頭に3人の兄、妹のアドリアーナ、弟ジョゼッペの5人の兄弟を持つことになります。

 ふたりの母親が又従兄弟同士だったことで、子供に恵まれない育ての母アダルジーザが生後6ヶ月の「わたし」を養子に貰い受けます。ところが、13年後産みの母の元に帰されます。実の両親が望んだと説明されますが、両親にそうした様子はありません。なぜ養家から実家に戻されたのか?、これは「わたし」の最大の疑問であり、ミステリーとして読めばこの小説が孕む「謎」。多感な13歳の少女「戻ってきた娘」がこの運命に挑む物語です。

自分がこの世に存在する理由が見つからなかった。「お母さん」という言葉を百回ぐらい繰り返し唱えるうちに、意味がことごとく消え失せて、単なる口の体操となってしまうのだった。
二人の生きた母親を持ちながら、わたしは孤児だった。一人はまだ乳飲み児のわたしを手放し、もう一人は十三歳のわたしを産みの親に押しつけた。要するにわたしは、秘められた偽の血縁関係、別離や隔絶の落とし子だったのだ。もはや自分が誰に帰属するのかわからなかった。
わたしは荷物じゃない!勝手にあっちへやったりこっちへやったりしないで。お母さん!

アドリアーナ
 家族の多い実家で、「わたし」は掃除、洗濯に食事の用意までやらされ、家事などやったことがないので失敗の連続。3歳年下の妹アドリアーナから「鉛筆以外持ったことがないの?」と皮肉られる始末。アドリアーナだけは、実の父母、兄弟に邪魔者扱いされる「わたし」に親切。

アドリアーナは買い物のやりくりも上手だった。八百屋でジャガイモを一キロ買うと、人参と玉葱をおまけしてもらって野菜スープの材料にしたし、肉屋へ行けば、挽き肉を二百グラムだけ買って、飼ってもいない犬のために屑肉を分けてもらった。むろん屑肉も茹でて、自分たちで食べるのだ。
「付けにしておいて。月末には父さんが支払いに来るから」

面白いのは、世間知に長けたしっかり者のアドリアーナが、10歳になってもオネショが治らないこと。このキャラクターはなかなか魅力的で「わたし」の物語を後ろからしっかり支える存在です。実家に戻ったその夜、ベッドない「わたし」はアドリアーナのおねしょの匂いの染み付いたベッドでいっしょに寝かされます。『戻ってきた娘』は、このふたりの物語とも言えます。

あの二人はいつも、姉ちゃんのことを好き勝手にあっちへやったりこっちへやったりして、あんまりや。反抗しないん?
・・・もう絶対に離ればなれにならないって誓いを立てようよ。姉ちゃんがここを出てくなら、うちもついてく

アドリアーナもまた「わたし」を手がかりに運命からの脱出を目論んでいます。ラストで、なぜ実家に戻されたのかという謎、「大人の事情」が明かされますが、この事実を「わたし」に告げるのまたアドリアーナ。

 『戻ってきた娘』は、イタリア半島中部のアペニン山脈麓の村を舞台に、戻ってきた娘「わたし」とアドリアーナ、ふたりの少女のビルドゥングスロマンです。『戻ってきた娘』がベストセラーとなったのにはイタリアの事情があるようです。「訳者あとがき」によると、

当時のイタリアでは、親同士の合意だけで、子沢山の家庭から子どものいない家に乳幼児が引き取られるということは、頻繁に起こっていたらしい。・・・養子縁組法がイタリアで整備しはじめられるのは、一九六七年のことだ。

イタリアならではの背景があるようです。2020年には本書の続編、「わたし」とアドリアーナの物語『ボルゴ・スッド(Borgo Sud)』が刊行されたようです。アドリアーナのその後は是非読んでみたいです。

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スマホを使って 読書感想文 [日記 (2021)]

スローカーブを、もう一球 (角川文庫) スローカーブ.jpg
 
 夏休みになると当blogの「読書感想文」へのアクセスが増えます。中高生にとって(ウチの小2の子供もあるらしい!)読書感想文の宿題は頭の痛い問題のようです。感想文の書き方は、このblogでも何度も取り上げていますが、スマホを使った簡単な書き方を紹介します。スマホを使えばハードルが低くなります。

何を読むか
 文学、ミステリー、エッセー、ノンフィクション、評論等いろいろありますが、短いものの方がテーマがはっきりしているので読むのも書くのも楽です。興味のある作家なり興味のあるテーマの本を選択すればいいわけですが、何も小説に限ったわけではなく、スポーツの本、昆虫や動物の本、天文の本でも、極端な話スマホの「取説」だっていいわけです。要は1冊の本から何かを読み取りそれを文章にすること、「考えて書く」ことが読書感想文が夏休みの宿題とされる所以でしょう。そんなモノやってられない、という方はスマホの「取説」で感想文を書きましょうw。だれも取説を読んでスマホを使いませんから、新しい発見があると思います。スマホの機能の説明を書いても感想文になりませんから、メーカーの取説作成者の「視点」 →何処に焦点を当てているかを意識して読み、それを明らかにすれば立派な感想文になるはずですw。青空文庫にはパブリックドメインの本が沢山ありますから、これをスマホのKimdleで読めば、材料集めも楽になります(後述)。

材料を集める(一太郎pad
 読書感想文は、本を読んで「なるほどそう思う」「それは面白い」「そうは思わない」「私はこう思う」といった「断片的な感想」をつなぎ合わせて一つのまとまった文章にすることです。この「断片的な感想」が材料です。この材料集めをスマホでやってしまおうというこわけです。
 使うアプリは「一太郎Pad(iPhone、androi)。一太郎padは、スマホのカメラで撮った文書をテキストに変換するアプリです。本を読みながら、気になったページ、気に入ったページ(「なるほどそう思う」「そうは思わない」といったページ)を片っ端からカメラで撮ります。付箋を貼っておいて後でまとめて撮ってもいいでしょう。これをテキストに変換してスマホの「メモ帳」にコピペしてゆきます。読み終わると、メモ帳はその本の「書き抜き帳」となります。
 kindleで読書をすると”Your Notes and Highlights”を使って同じことができます。スマホの画面をスクリーンショットして一太郎Padでテキスト化した使った方が簡単です。Kindleのハイライト機能を使えば、ドラッグで指定した文章がアマゾンのクラウド”Your Notes and  Highlights”に貯まりますからコピペ。
 「書き抜き帳」があるので、一から書くよりかなりハードルは低いと思います。
一太郎Pad2.jpg 一太郎Pad.jpg
書いてみる
1)書き出しをどうするか
 書き出しに悩むと思います(こちらを御参照)。書き出しにはいろいろあると思いますが、あらすじ要約、本の冒頭利用、作者紹介というのが考えられます。あと、その本を選んだ理由から初めてもいいし、いきなり「この本は面白い!、どこが面白いかというと...云々」と感想から入ってもいいでしょう。

2)材料を並べ替える
 A、B、C…という文書の集合体「書き抜き帳」はもう立派な感想文ですが、このままでは文書どうしの脈絡がとれていません。これを順序を入れ替えて筋の通る文章にします。A→接続詞→C→接続詞→B→接続詞→Dみたいな話です。つなぐあいだに、自分の感想みたいなものが生まれると思いますから、ソレも書き加えます。

3)自分の言葉にする
 テキスト化した文書そのものは作者の言葉ですから、整形加筆して自分の言葉にします。難しい話ではなく、余分な部分を削って「である調」を「です、ます調」に変えるだけでもいいでしょう。難しい言い回しや言葉は簡単な言葉に書き換えます。
 読み返してみて、意味の通る文章になっていれば、「読書感想文」は完成ですw。コピペじゃないかと言われそうですが、この方法のキモは、コピペとコピペの間に何が生まれるか、何を生み出すかです。

4)字数を数える、原稿用紙に書く
 原稿用紙3枚とか、5枚とか字数が決まっていると思います。完成した感想文のテキストを”原稿用紙アプリ”に落とし込めば段落などのイメージが掴め、削除追加が容易です。Office のwordしか使ったことはありませんが、スマホ用のアプリがあると思います。

 最後にお薦めの本を紹介します。芥川龍之介『藪の中』、坂口安吾『ラムネ氏のこと』、山際淳司『スローカーブを、もう一球』。『藪の中』と『ラムネ氏のこと』は青空文庫にあります。『スローカーブを、もう一球』は群馬県立高崎高校が、スローカーブを武器に1981年の春のセンバツに出場した物語です。剛速球のストレートでもなくフォークでもなくスローカーブ、監督は野球に素人の世界の先生という変則チーム、ミソは、高校野球の話では無いところです。名著だと思います。『藪の中』は、黒澤明『羅城門』という映画にもなっていますから参考になります。本を読んで映画を観て →感想文というのアリです。この手の映画はけっこうあります、当blogで「映画と原作」で検索してみて下さい。永井荷風の『濹東綺譚』という奇書もありますw。

 続きもあります。

タグ:読書
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映画 天命の城(2017韓) [日記 (2021)]

天命の城 [DVD]  1636年、清が朝鮮に侵攻した「丙子の乱」を描いた歴史ドラマです。

 朝鮮という国はその地政学上、古くから北方からはツングース、漢民族など南からは「倭」の侵攻を受けています。好太王碑には、4世紀末に倭が吉林省まで攻め込んだことが記されています(白村江の戦いや秀吉の侵攻も)。
 考古学上最初の朝鮮国家といわれる衛氏朝鮮(檀君朝鮮は神話)は建国も滅亡も漢民族で、前漢は楽浪郡等を置いて朝鮮を支配し、以来朝鮮は中国王朝に朝貢しています。下関条約(日清戦争)で朝鮮が独立するまで朝鮮は中国王朝の属国だったわけです。中国の他、モンゴルの支配、満州族の支配を受けています。朝鮮は漢民族から多くの文化を受け継いでいますから、漢民族に従うのは抵抗がありませんが(小中華思想)、夷狄と貶んでいる女真族の清に支配されるわけですからこれは屈辱だったと思います。

 朝鮮は、儒教に基づく「事大主義」を国家の基本理念とし、中国王朝に柵封を受けて安全保障としてきたわけです。女真族の清が漢民族の明を倒し「オレに従え」と朝貢を強いてきたのですから、朝鮮のアイデンティは根本から危うくなります。「ウチの親分は明だ、愛新覚羅には従えない!」と清に反旗を翻したのが1636年の「丙子の乱」です。これ、米中の間で綱渡り外交をやっている現在の韓国の状況に似ていなくもない。そんなわけで『天命の城』を観てみました。

 清は鴨緑江を渡って京城(ソウル)に向かい王・仁祖は南漢山城に逃げて清と対峙します。兵は城内の農民を入れて12,000、対する清は10万。時は冬で、兵は凍え食料は底をつく状況。吏曹大臣の崔鳴吉(イ・ビョンホン)は李朝存続のために清に降伏し清の柵封を受けるべきだと主張し、礼曹大臣の金尚憲(キム・ユンソク)は明を宗主国として清と戦うべきだと主張します。金は清につけば朝鮮の「礼節」滅びると主張し、崔は李朝が滅んで何の礼節かと言うわけです。
 紆余曲折があって、(命の惜しい)王・仁祖は清の軍門に下り朝鮮は清の属国となります。現実論が礼節に勝ったわけです。

 京城に帰り、和議の式に臨む仁祖に清の命令が伝えられます。朝鮮の王は、1)罪人だから(京城の)南門は通れない、王は西門から出よ、2)行列に護衛兵を伴ってはならない、3)王の衣を脱ぎ臣下の着物に着替えよ、4)壇の下で大清帝国の皇帝陛下に「三跪九叩頭」の礼をとれ、と。
 実際の講和条約「丁丑約条」はさらに厳しい内容で、王の長子と次男、および大臣の子女を人質を送ること、清国が明を征服する時には援軍を派遣すること、城郭の増築や修理については、清国に事前に承諾を得ること、清国に対して黄金100両・白銀1000両と20余種の物品を毎年上納すること(貢女も)、などが謳われます。条約を忘れないように満州語・モンゴル語・漢語で刻ませ記した「大清皇帝功徳碑」を建てます。朝鮮にとっては「恥辱碑」で、ソウルには今も建っているそうです(撤去されたかな?)。

 「大清皇帝功徳碑」が韓国で「恥辱碑」と言われるなら、『天命の城』は「国辱映画」なのか?。面白いのは、主役は恥辱碑」の元となった崔鳴吉ということです。
 尚憲は清の属国となった恥辱に耐えきれず自刃し(史実では清の人質となったらしい)、崔鳴吉は清の皇帝に三跪九叩頭する王・仁祖の横で悔し涙を流します(この功績で李朝の総理大臣になったらしい)。このシーンを韓国の人々はどんな思いで観たのか?。『天命の城』は、大国に隷属しなければ生きてゆけない朝鮮の宿命を描いたのか、大国の狭間で(あるかどうかは別にして)第三の道を模索すべきだったと言いたいのか、なかなか微妙です。よく言えば、国際政治で舵取りを間違うと亡国の運命が待っていると警鐘を鳴らす映画なんでしょう。
 金融危機からIMF管理に陥った韓国を描いた『国家が破産する日』(2018)も、安易な金融政策とバブルに走る国民に警鐘を鳴らす映画でした。2017、18年にこのような映画が作られヒットしたということは、韓国がそうした危機を抱えているということなのか?。この2本は、安易なイデオロギーを排し、丙子の乱や金融危機を史実として冷静に評価分析しているといってもいいでしょう。文在寅サンにも是非観ていただきたいw。
 以下斜めから見た感想です。この映画は「国辱映画」ではなく、むしろ韓国人のメタリティーに訴える映画です。韓国の国民性を表すに「恨」いう言葉が使われます。仁祖がむべき夷狄、清の皇帝に三跪九叩頭する姿に観客の「恨」は燃え上がったはずです。1910年、清に代わって現れたのは、これも夷狄である日本です。清の支配と日韓併合の屈辱(恨)が積りに積り、今日に至っているのでしょうね。清は滅んでいますから恨の矛先は日本に向かい反日は終わることはない、そう思ってしまう映画ですw。

監督:ファン・ドンヒョク
出演:イ・ビョンホン、キム・ユンソク、コ・ス、パク・ヒスン

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